公益財団法人 日本漢字能力検定協会

漢検漢字文化研究奨励賞

平成29年度(第12回)受賞者発表・講評・論文

平成29年度 漢検漢字文化研究奨励賞 受賞者

各賞受賞者(敬称略)論文タイトル講評
最優秀賞 該当無し
優秀賞 該当無し
佳作 ネゴロ アサコ
根来 麻子
川崎医療福祉大学
総合教育センター 専任講師
正倉院文書における「廻」字の用法
pdf論文PDF(883KB)
講評
佳作 ヤン チョン
楊 瓊
同志社大学大学院生 原因理由を表す「によりて」について―漢文訓読の影響をめぐって―
pdf論文PDF(744KB)
講評

講 評

京都大学名誉教授
公益財団法人 日本漢字能力検定協会漢字文化研究所 所長
阿辻 哲次

平成29 年度漢検漢字文化研究奨励賞は厳正な審査の結果、以下の通り受賞者が決定した。受賞された方々に対して心よりお祝いを申しあげる。
この事業は、(公財)日本漢字能力検定協会が主催する事業のひとつとして、わが国の歴史を通じて文化に深くかかわる漢字と日本語(国語)に関するすぐれた研究または評論・教育方法の開発などを顕彰し、研鑽をたたえ、その成果を世に広めるための制度としてはじまったもので、今回は第12 回目にあたる。
かつては応募する投稿論文が非常に少なく、そのために締め切りを延長して再募集せざるを得なかったという苦い経験もあったが、過去3 年以内という制限を設けて既発表の論文の投稿を可能にしたことが大きく作用して、うれしいことに回を追うごとに投稿論文数は増えつづけ、そして論考の質もずいぶん高くなった。
今回も締め切り直前の駆け込みなどをふくめて合計10 本の論考が寄せられた。ただ、その中には投稿者の年齢制限(45 歳未満)の条項に合致しないものが1 本あり、規定にしたがって、審査の対象から除外された。
今年は非常に遺憾な投稿が2 例あった。投稿に関する要領と規定については毎年web上で公表しているが、その実施概要「応募について」の項に記載される投稿要領には「応募論文はワープロ等で作成し、印刷出力したもの」と記されている。だがそれにもかかわらず、他の組織に投稿して雑誌や紀要などに掲載された論考を、そのコピーだけを送ってよこすという事例が今回は2 本あった。
このようなことは本事業では未曾有のことであったが、議論の結果として、論考の内容を吟味することなく、審査の対象としなかった。過去3 年以内に発表された論考の投稿は承認されているが、それは既発表の論考に修正や補足を施して、議論のさらなる深化と精密さを期待する故であって、なにひとつ加筆も修正もなく、既発表論文を掲載した刊行物のコピーだけを送りつけるのは、投稿規定に違反する行為であると選考委員は認定した。同様の行為に対しては、今後も審査の対象としないことをここに明記する。
残念ながら受賞の対象とならなかった論考の中にも、これまでと同様に、興味深い研究もいくつかあった。しかしそれは、たとえば非漢字圏の外国で、日本語教育機関で学習者に提供される漢字の選定と教育に関してなど、問題の設定が日本における漢字と日本語の文化に関する研究という、本事業が目的とする領域にはそぐわないか、あるいは漢字研究ではなく言語学の範囲に特化した専門的な問題を扱った論考であったなどの理由などで、受賞にいたらなかった。
年を追って本奨励賞の存在が広く認知されるようになった感をいっそう強くしたことは、関係者一同が深く喜びとするところである。世間には、さまざまな問題意識を持って平素から漢字と深くつきあっている方々がたくさんおられると見うけられる。そのような方々からも、フレッシュで独創的な研究の成果が一篇でも多く投稿されることを、関係者一同は切に希望する。


佳作  根来 麻子
「正倉院文書における「廻」字の用法」

正倉院文書における「延廻」「怠廻」「廻怠」という熟語は、「仕事を先延ばしにする」意味で用いられている。上代では他に類例を見ず、漢籍・仏典にも用例が無い。翻って「廻」字には元来、「怠るさま」や「違背」の意味がある。また「遲廻」という漢語もあり、『令集解』所収「古記」に1 例現れている。さらに『政事要略』「国司奏状」所引の「厩庫律」には「廻避」という熟語もある。これらにより、正倉院文書の「廻」字の用法は律令を通して受容された可能性があるという。上代における漢語の受容と変容をたどる実証的で説得力のある論文である。
「何故そうなのか?」 この問いこそが研究の最も重要な出発点である。根来氏は問題発見の嗅覚が優れているのみならず、着実に解決に至る方法も身に付けている。今後とも実事求是により発見を積み重ねてゆかれるものと確信できる。

(森 博達)

佳作  楊 瓊
「原因理由を表す「~によりて」について ―漢文訓読の影響をめぐって―」

本論文は、古代日本語の「によりて」という表現形式に注目し、原因理由を表す用法のうち、〈のおかげで〉のようにプラスの意味を帯びるのは、漢文訓読、特に仏教系漢文の「依」字を「によりて」と訓読した結果であることを解明したものである。加えて、院政鎌倉時代以降の、説話や軍記等の和漢混淆文に見られる「によりて」にプラスの意味が出現するようになるのも、この語法の影響であることを論じている。漢文の訓読によって生じた語法が日本語に影響を与えた事例については様々な観点から考究されているが、本論文は、これまで見過ごされてきた、評価性に関わる繊細なニュアンスの問題を取り上げている点に新規性があると認められる。古代日本語の様々な文献資料を丹念に読み込み、必要な論証手続きを周到に行った力作であり、模範的な論文である。さらに中世和漢混淆文における、仏教漢文の訓読用法の影響という新たな視点も提示していて、今後の発展が期待される。

(山本 真吾)

平成29年度(第12回)実施概要

趣旨

漢字研究、漢字に関わる日本語研究、漢字教育など、広く漢字文化に関わる分野における優れた学術的研究・調査等に対して、その功績をたたえ社会全体に広く公表していく制度です。
将来一層発展することが有望視される、若い世代の清新な学究の優れた研究論文を選考し、更なる深化を奨励するため、懸賞論文形式の「漢検漢字文化研究奨励賞」を設定します。

対象

◆漢字研究または広く漢字に関わる日本語研究であること。

◆将来、一層の研究・調査の深化、発展が期待できる若い世代の研究(者)であること。

◆応募者本人が日本語で作成し、48,000字以下の分量であること。但し、図表、註、参考文献、引用文献は字数に含めない。

◆過去3年以内に公表した論文(※)も対象とする。但し、既に他で受賞した論文は対象外とする。

  • ※平成26年4月1日以降に提出または刊行したもので、著書の場合は論文が元となっているものを対象とする。

選考委員

阿辻哲次  京都大学名誉教授

笹原宏之  早稲田大学社会科学総合学術院教授

森 博達  京都産業大学外国語学部アジア言語学科教授

山本真吾  白百合女子大学文学部国語国文学科教授   (五十音順)

表彰

正  賞 ・・・・・・・・・・・ 表彰状

副  賞 ・・・・・・・・・・・ 奨励金

  1. 漢検漢字文化研究奨励賞 最優秀賞 100万円
  2. 漢検漢字文化研究奨励賞 優 秀 賞  50万円
  3. 漢検漢字文化研究奨励賞 佳   作  30万円

※但し、該当なしの場合もある。

※副賞は所得税および復興特別所得税の源泉徴収額を差し引いた上で支払う。

授賞式  平成30年3月下旬予定(詳細は後日案内)

応募について

  1. 応募条件
    応募締切日時点での満年齢が45歳未満であること。
    共同執筆の場合は、応募締切日時点ですべての執筆者の満年齢が45歳未満であること。
    共同執筆の場合は、それぞれの執筆分担を論文中に明記すること。
  2. 応募方法(自由応募)
    以下の3点を揃え、応募締切日までに郵便または宅配、もしくはEメールに添付して提出してください。
    1. excel『応募用紙』(当協会所定のもの/242KB)

      ※共同執筆の場合は、執筆代表者のみ当協会所定のものを提出してください。
      他の執筆者は、共同執筆者用応募用紙に記入し提出してください。

    2. excel『応募論文の概要』(当協会所定のもの/47KB)
    3. 『応募論文』
      応募論文は次のいずれかの形式でご提出ください。
      1. ワープロ等で作成し、印刷出力したもの
      2. ワード・一太郎仕様のデータFDまたはCD-ROM
      3. ワード・一太郎仕様のデータまたはPDF(Eメール添付の場合)

      ※応募書類一式は返却いたしませんので、あらかじめコピーをお取りの上、ご提出ください。

      ※Eメール添付の場合、レイアウトの保持・表示・印刷が可能なファイルフォーマットに変換した上で提出してください。

  3. 応募締切日
    平成29年10月31日(火)(協会必着)

選考と結果通知

◆「漢検漢字文化研究奨励賞」選考委員会による選考を行います。
 結果通知…平成29年12月下旬

◆受賞論文は当協会刊『漢字文化研究』に掲載するほか、当協会のホームページや機関誌、書籍等、当協会が適当と認めた媒体で発表します。

◆選考結果は封書にて連絡いたします(共同執筆の場合は執筆代表者へ送付)。

応募先および問い合わせ先

〒605-0074 京都市東山区祇園町南側551番地
公益財団法人 日本漢字能力検定協会「漢検漢字文化研究奨励賞」係
TEL:0120-509-315 月~金 9:00~17:00(祝日・お盆・年末年始を除く)
Eメール:km(at)kanken.or.jp
※(at)は@に置き換えてください。

●個人情報に関する注意事項●

  • 記入して頂いた個人情報は、「漢検漢字文化研究奨励賞」に関わる業務にのみ使用します。
    (ただし、本件に関わる業務に際し、業務提携会社に作業を委託する場合があります。)
  • 個人情報の記入は任意ですが、必須項目に記入がない場合は申請の受理ができないこともございますので、
    ご注意ください。
  • 個人情報に関する開示、訂正等のお問い合わせは、下記の窓口へお願いします。
    公益財団法人 日本漢字能力検定協会 個人情報保護責任者 事務局長
    個人情報相談窓口 http://www.kanken.or.jp/privacy/

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