公益財団法人 日本漢字能力検定協会

漢検漢字文化研究奨励賞

平成23年度(第6回)受賞者発表・講評・論文

平成23年度 漢検漢字文化研究奨励賞 受賞者

各賞受賞者(敬称略)論文タイトル
最優秀賞 該当無し
優秀賞 該当無し
佳作 張 莉 同志社女子大学現代社会学部
准教授
狩谷棭齋の『轉注説』について
―「転注」同字異義説を中心として―
pdf論文PDF(8.8MB)
佳作 早川 咲 会社員
(富山大学人文学部卒業)
「六書」について
pdf論文PDF(2.6MB)
佳作 李 瑩瑩 神戸大学大学院人文学研究科 博士後期課程3年 上代漢字文献における「矣」の用法
pdf論文PDF(920KB)

講 評

京都大学大学院人間・環境学研究科教授
財団法人 日本漢字能力検定協会 評議員
阿辻哲次

平成23年度漢検漢字文化研究奨励賞は厳正な審査の結果、受賞者が決定した。受賞された方々に対して心よりお祝いを申しあげたい。
この事業は、(財)日本漢字能力検定協会が主催する事業のひとつとして、わが国の歴史を通じて文化に深くかかわる漢字と日本語(国語)に関するすぐれた研究または評論・教育方法の開発などを顕彰し、研鑽をたたえ成果を世に広めるための制度としてはじまったもので、今回は第6回目にあたる。
これまでには投稿論文がきわめて少なく締め切りを延長せざるを得なかった苦い経験があり、また本数は揃っても内容的に受賞しうると評価しうるものがないなどのこともあったが、回数を重ねるにつれて投稿論文の質が高まってきた。今回は投稿数が7本と、決して多くはなかったものの、いずれも選考委員全員が研究水準の高さを実感する力作ばかりであったが、残念ながら最優秀賞に該当するものはなかった。
今回に受賞の対象とならなかったものについても、周到な調査をふまえた考証論文であるものの、従来の説の祖述に終始していると思われるものや、外国人で日本語を学習する人に対する漢字教育の実践経験をふまえた、非常に興味深い論考もあったが、オリジナリティの面でいまひとつ物足りなさを感じさせる点で受賞を逸した。これらについては今後の新しい研究の進展が大いに期待される。
近年にようやく定着しはじめたと見うけられるこの事業が、大学などの機関における研究者のみならず、これまで検定試験を通じて漢字を学習してきた方々のあいだに広く認知され、これまでの学習という姿勢から、さらに研究という方向へ、漢字とのつきあいが深まっていくきっかけとなることを、審査にあたったものの一人としてあらためて切望するしだいである。


佳作 張 莉
「狩谷棭齋の『轉注説』について―「転注」同字異義説を中心として」

専門家を除いて、日本でもそれほど知られていない狩谷棭齋という人物の、それも「転注」という扱いが非常に難しいテーマを取りあげたことが評価された。ただ論文の大部分が棭齋「転注説」の解説に費やされており、詳細な分析と例示に欠ける恨みがある。朱駿聲『説文通訓定聲』転注説との比較において、棭齋の考えが朱駿聲の轉注説に影響を与えたのではないかという考察が本論考における最大のオリジナルな指摘だが、挙げられているのは状況証拠だけで、書誌学的な証明などが乏しいので、それほど説得的ではない。ただその議論を通じて清朝考証学と棭齋の考証学をあわせて紹介しているところは非常に興味深い。

(阿辻 哲次)

佳作 早川 咲
「『六書』について」

いくつかの漢字辞典において、多くの漢字を六書法で構造分析し、そこから導かれた本義がまちまちであることに素朴な疑問をもつことからはじまった、非常に正直な論文である。著者は小学校で教えられる教育漢字1006字のすべてを代表的な漢字辞典で調べ、その結果を表に網羅して提示し、そのばらつきが起こるのはなぜなのかを著者なりに分析した。その作業はまことに敬服にあたいする。ただそこには藤堂明保氏の「単語家族」説に基づいた字源解釈への言及が希薄であり、すべてを伝統的な「六書法」だけで分析することに若干の問題が残る。また現今の漢和辞書で評価が高い『漢辞海』が使われなかったのはなぜか、という疑問も残るが、いずれにせよ周到な調査に基づき分析したあとで、伝統的な六書に対して「三書説」を考察するなど、これまでの学説整理についても一定の成果をあげていると評価できる。

(阿辻 哲次)

佳作 李 瑩瑩
「上代漢字文献における『矣』の用法」

本論文は上代の漢字文献における「矣」の用法を考察し、漢文における「矣」の助辞用法から日本語の助詞表記への定着経緯について検討している。『古事記』の「矣」が提示用法から国語助詞「ヲ」の表記へと移行する中間的用法であり、上代では助詞表記として完全には確立されていなかったという。助詞のハ・バを表記する「者」と異なり、助詞表記の「矣」が国語助詞ヲとして定着できなかった原因をそこに求めている。各文献内部の文体区分に注意を向けることにより説得力を増している。今後は各文献における例外の検討など、さらなる分析が期待される。

(森 博達)

平成23年度 実施概要

趣旨

漢字研究、漢字に関わる日本語研究、漢字教育など、広く漢字文化に関わる分野における優れた学術的研究・調査等に対して、その功績をたたえ社会全体に広く公表していく制度です。

将来一層発展することが有望視される、若い世代の清新な学究の優れた研究論文を選考し、更なる深化を奨励するため、懸賞論文形式の「漢検漢字文化研究奨励賞」を設定します。

奨励対象

◆漢字研究または漢字に関わる日本語研究。
※漢字に関わる研究を広く対象とする。

◆将来、一層の研究、調査の深化、発展が期待できる若い世代の研究(者)であること。

◆応募者本人が日本語で作成し、48,000字以下の分量であること
(ただし、図表、註、参考文献、引用文献は字数に入れない)。

◆既に他に公表した論文(過去3年以内)も対象とする。

  • ※平成20年4月1日以降に提出または刊行した著書を対象とする。
  • ※著書は、論文が元になったものを対象とする。
  • ※他で受賞した論文は対象外とする。

選考委員

阿辻哲次 京都大学大学院人間・環境学研究科教授

笹原宏之 早稲田大学社会科学総合学術院教授

森 博達 京都産業大学外国語学部中国語学科教授

山本真吾 白百合女子大学文学部国語国文学科教授   (五十音順)

助成の条件

正  賞・・・・・・・・・・・表彰状授与

副  賞・・・・・・・・・・・奨励金支給

  1. 漢検漢字文化研究奨励賞 最優秀賞 100万円
  2. 漢検漢字文化研究奨励賞 優 秀 賞  50万円
  3. 漢検漢字文化研究奨励賞 佳   作  30万円

※但し、該当なしの場合もある。

授賞式 平成24年3月下旬(詳細は後日案内)

応募について

  1. 応募資格・条件
    応募締切日現在で45歳未満である方。
    共同執筆の場合は、すべての執筆者が45歳未満であること。
    共同執筆の場合は、それぞれの執筆分担を論文中に明記すること。

    ※主として、学校等教育・研究機関の教員、研究者、大学院在籍者、教育委員会等の教育行政に携わっている方を想定しております。

  2. 応募方法(自由応募)
    以下の3点を揃え、応募締切までに郵便もしくは宅配でお送りください。
    1. excel『応募用紙』(当協会所定のもの/47KB)

      ※共同執筆の場合は執筆代表者のみ当協会所定のものを提出してください。
      他の執筆者は別紙(書式自由)に応募用紙相当の事項を記入し提出してください。

    2. excel『応募論文の概要』(当協会所定のもの/32KB)
    3. 『応募論文』
      応募論文は次のいずれかの形式でご提出ください。
      1. ワープロ等で作成し、印刷出力したもの
      2. ワード・一太郎仕様のデータFDまたはCD-ROM
      論文の1ページあたりの字数は、1行40字×40行の1,600字にあわせてください。
      (図表、脚注、参考文献、引用文献はこの限りではありません)

      ※応募書類一式は返却出来ませんので、予めコピーをお取りの上、ご提出ください。

  3. 応募締切日
    平成23年10月31日(消印有効)

選考と結果通知

当協会選考委員会による選考。
 結果通知...平成23年12月下旬

当選作は当協会刊『漢字文化研究』(旧『漢字教育研究』)に掲載するとともに、当協会ホームページで公表します。

選考結果は封書にて連絡。

応募先および問い合わせ先

〒600-8585 京都市下京区烏丸通松原下る五条烏丸町398
財団法人 日本漢字能力検定協会『漢検漢字文化研究奨励賞』係
TEL 0120-509-315(無料) FAX 075-352-8310

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