小学校における国語教育の重要性を感じ、漢検を開始 学力の向上だけでなく、物事を「やり抜く力」も育みたい／小学校／埼玉

深い学び・深い思考の基となる力は、語彙力であり漢字力

　戸田市は近年子どもの数が急激に増加しており、教育熱も大変高まっています。本校でも、タブレットによるデジタル教科書の導入や、よりよい人生を歩むための経済教育(※１)の授業など、従来小学校で行ってきた教育とは異なる発展的な内容に取り組んでいます。
　同時に私は、小学校の段階における基礎的な国語教育も極めて重要なものだと考えています。私の考えの基本には「漢字は語彙そのものであり、語彙の獲得は国語力に通じる」というものがあります。私たちは、日頃知識を得たり思考したりする際に日本語を活用しています。したがって、より深く学び、より深く思考をするためには、豊かな語彙力が必要不可欠となります。子どもたちは漢字学習を通して漢字の読み・書きだけではなく、会話や作文に必要な力も習得しています。そのため、「漢字力＝語彙力＝読解力」という関係性が生まれるので、結果として漢字を学ぶことは、読解力、ひいては全体の学力向上にも役立つと感じています。前任校で漢検を取り入れたところ、子どもたちの学力向上、学習意欲向上に効果があったことから、本校でも漢検を開始することにしました。

当該学年の漢字をほぼ習い終えた年明けの冬検定で、漢検を実施

　本校での初めての漢検は、平成３０年冬（平成２９年度第３回検定）の土曜日でした。この時期であれば１年間の漢字はほぼ習い終えていて、当該学年の漢字の習得状況を把握することができるからです。当日の運営や監督業務は、学校応援団(※２)の方にご協力いただきました。今後、さらに志願者が増えた場合は、通常日課の中に位置づけていきたいと考えています。

保護者・児童・教員からも好反応

　保護者からは「学校が会場なら、遠く離れた公開会場まで行く必要がなく、安心」「珍しく集中して勉強していると思ったら、漢検に向けて勉強していた」などの声をいただきました。合格した子どもたちからは「漢字が好きになった」「初めて賞状をもらって嬉しかった」「自信がついた」などと喜びの声を多く聞き、また不合格だった子どもからも「勉強が足りなかった。もう少しだったのに悔しい」「今度はもっと頑張りたい」といった、学習の振り返りや次回への前向きな言葉を聞くことができました。
　教員にとっても、指導してきた内容がどのくらい子どもたちに身についているかを知ることは、客観的に自分の指導を振り返る機会になりますし、今後の漢字指導の意識向上にもつながると考えています。

漢検を通じて育まれた、「互いに学び合う姿勢」と「やり抜く力」

　「漢検合格」という共通目的をもつことが、子どもたちの勉強を始めるきっかけになっていると感じています。合格に向けて互いに教え合い、学び合うことが良い刺激を生み出し、学習意欲の向上が図られています。
　これからのＩＣＴやＡＩの時代には、人が漢字を覚えたり計算をしたりする必要はなくなるという意見もあります。ですが私は、小学校教育とは、いつの時代でも生きていくため、そして生活していくためのベースとなる教育だと考えています。小学校の段階で習うような漢字や熟語を大人になっても都度調べたり、そのためにＩＣＴやＡＩを利用したりするようでは、真の学力が身についているとは言えません。先に述べたように、私たちは普段日本語を活用して知識を得たり、思考したりしています。真の学力を身につける上で、きちんとした日本語を習得することは、今話題の「リーディングスキル」や「論理的思考」にも関係する大切な要素だと考えます。
　また、漢検はその学年で学んだ漢字が出題されるので、頑張れば誰もが「合格」を手にすることができます。努力し、達成することの喜びを味わう機会を設けてあげることで、子どもたちの「やり抜く力」も育まれると考えています。子どもたちにはぜひ漢検を通じて、これからの時代を生き抜くための力を身につけてもらいたいです。

※１ 経済教育…児童生徒に、必然的に「選択」や「意志決定」が求められる学習機会を与え、「考える習慣」と「質の高い選択ができる力」を育成するための教育を指す。

※２ 学校応援団…学校における学習活動、安心・安全確保、環境整備などについて、ボランティアとして協力・支援を行う保護者・地域住民による活動組織を指す。

※掲載内容（所属団体、役職名等）は取材時のものです。

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