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中学校

明確な目標設定で学習の動機付けを/中学校/神奈川

国語科主任 小澤 晶 先生

関東 / 神奈川

[私立] 聖光学院中学・高等学校

国語科主任 小澤 晶 先生

1.「漢検」導入の背景

 本校では、平成8年から「漢検」を導入しています。現在(取材時平成19年)では、毎年400名前後の生徒が「漢検」に挑戦しています。

 「漢検」を導入したきっかけは、生徒の漢字力の低下が進み、校内で大きな問題としてクローズアップされたことでした。例えば、漢文の授業で漢字の意味を説明することに時間を取られてしまい、本文の読解に割ける時間が足りなくなってしまうなどの事態が起こったのです。
 また、日頃からの地道な反復訓練が必要な漢字学習は、どうしても後回しにされてしまいがちです。生徒達を漢字学習に向かわせる動機付けが必要だと感じ始めていました。国語の授業の中で漢字の小テストを実施するなど対策を講じましたが、思うように成果はあがりません。校内のテストでは、大きな動機付けにはなりにくい様子でした。

 そんな時に「漢検」の存在を知りました。全国共通の指標で評価されるのであれば、生徒達にとっても動機付けとなりうるのではないか、と考えました。とはいえ、すぐに導入を決めたわけではありません。本校の生徒達の漢字力向上に繋がるような質の高い問題内容かどうかを見極めることが先決です。そこで、まず私が個人で受検してみました。実際に受けてみると、問題の内容も多彩でバランスがとれている。これなら大丈夫と判断し、正式に導入することにしました。
 今では学校行事のひとつとして、すっかり定着しています。

2.「漢検」の目標級と告知方法

 受検にあたっては、中学生は3級、高校生は2級合格をそれぞれ卒業までの目標に設定しています。その級を設定した理由は、学習指導要領で定められている、それぞれの学年で最低限身につけるべき範囲だからです。生徒達には、入学当初からそのことを授業の中で繰り返し伝えています。本校の生徒の間でも、実際に2級を取得している先輩達の姿をみて、「漢検のゴールは2級」という相場観が定着しているようです。

 また、国語科のシラバスの中にも各学年ごとの目標級を明記しています。もちろんシラバスは全教員に周知されますので、他教科も含めた全ての教員が本校の「漢検」目標級を認識しています。さらに、本校のホームページ上にもシラバスを公開することで、保護者の方々にも周知徹底を図っています。保護者の方とも共通認識を持つことで、漢字の家庭学習を誘う効果も期待できるのです。

 学校ホームページは、本校に入学を希望される小学生やその親御さんからも閲覧されているでしょう。本校の指導方針、つまり「大学受験に向けた高度な学力を養うだけではなく、基礎基本をしっかり定着させることにも重点を置いている」ということをご理解いただける一助となっていると思います。

3.「漢検」を効果的に活用した漢字指導法

 中学1年の段階では「漢検」対応の副教材を持たせて定期テストの範囲に含めるなど、合格のための対策を行っています。しかし、中学2年以上に関しては敢えて対策を行わない方針です。漢字学習の基本は自学自習です。生徒の自主性を育むためにも、敢えて自分の真の力試しの意味で挑戦の機会を与えています。

 また、目標級に合格した生徒に対しても、何度でも挑戦するように指導しています。2級に合格した後でも、最低年1回は2級を受け続けることを推奨しています。目標級に一度合格したからといって、それで必要な漢字力を全て身につけたわけではありません。ギリギリで合格だったという生徒も居るでしょうし、そこでは出題されなかった漢字が入試で出る可能性もあります。また、合格したことで安心してしまい、その後の反復練習を怠れば漢字を忘れてしまうのは当然です。暗記して終了ではなく、実際に語彙力として使いこなせるようにならなくては意味がないのです。運転免許証と同じで、取得した後に運転しなければペーパードライバーになってしまうのは当然です。「2級に3回連続で満点合格すれば、太鼓判を押そう」生徒にはいつも、そう言っています。

 これらのことは、合格することだけを目的(ゴール)にしてしまうのは間違いであるという理念によるものです。それは大学進学も同じこと。大学に合格できればアガリではなく、その先の人生を積極的に生きていける人材を育てたいと考えているのです。もちろん目標を持つことは大切です。ですが、その目標とはあくまで手段であり、目的と混同してはいけません。2級合格は明確な目標ですが、その目的はあくまでリーダーに求められる多面的・重層的な思考力の礎を獲得することにあるのです。

4.「漢検」導入後の効果と今後の課題

 「漢検」を導入した結果、定期考査などで思いもよらない誤字・脱字の解答を目にすることもめっきり減り、当初の狙いをある程度は達成できたと考えています。

 また、漢字力を高めることは、大学受験にも大きな効果があると考えています。入学試験では、1点2点の差が合否を分ける場合もあります。答案用紙に書いた漢字を1字間違えたことで、合格ラインに到達しなかった生徒も中にはいるでしょう。特に現代文の問題は、長文読解などの問題では得点差がつきにくいものです。漢字問題を確実に得点できるかどうかが、合否の境目になることは多いと感じています。

 先述した通り、ある基準に到達したら満足して学ばなくなることも問題ですが、一度もその基準に到達したことがないというのは、さらに問題です。世の中で必須とされる2級(常用漢字の読み書き活用)に一度も到達しないまま社会に出ることは、無免許のまま公道を走ることに近い状態です。
 最近の本校の課題は、2級に挑戦する生徒を増やすことです。もっと手前の級で満足してしまう、あるいはそもそも挑戦すらしないという生徒も居るのも事実です。本校の生徒は比較的学力の高い生徒が多いのですが、それでも2級は事前準備なしで受けるとなかなか受かりません。しっかり学習して挑戦すれば合格できる実力は備えているのに、落ちることを恐れて挑戦しないというのでは本末転倒です。

 このような背景から、最近では漢字学習を生徒の自主性に任せることには限界があると感じるようになってきました。そこで平成18年度は、中学1年生には全員受検をさせるようにしました。2級合格に向けて、スタートだけは全員で切らせるようにしたのです。また、語彙力は早期に身につけさせるべきであるという、本校の教育理念とも合致します。そうすることで、2級に到る時期も確実に早まるでしょうし、到達者の絶対数も増えると考えています。


※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。

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