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言葉の力なくして、真のリーダーたり得ない/高校/神奈川

学校長 工藤 誠一 先生

関東 / 神奈川

[私立] 聖光学院中学・高等学校

学校長 工藤 誠一 先生

1.人から自然と「ありがとう」と言われる真のリーダーを育て輩出する

 本校は、カトリック系のミッションスクールとして全人教育を行いながら、社会のリーダーとして活躍し得る人材を育てています。それでは、社会が求める真のリーダー像とは、どのようなものでしょうか。

 近年は、社会のあらゆる場面で合理性・効率性が重視され、それを先取りできる人間が社会的に有為な人材であるように思われています。ですが、気をつけなくてはいけないのは、いつも合理性・効率性ばかりを重要視していると、本来の目的を見失ってしまうことも多々あるということです。

 そういった人々の中には、その場を凌ぐための対症療法は得意なのですが、人間としての深さや幅広さが足りないという人も散見されます。いわゆる「学歴」はあっても、「学習歴」が足りないのでしょう。入試突破のためのテクニックを駆使して有名大学は卒業したものの、日本の歴史・文化・芸術は語れないというわけです。本校では、そういう人物を真のリーダーとは呼びません。

 本校が考える真のリーダーとは、人々から自然に「ありがとう」と言われる力を持った人です。それは、他人の痛みを知り、弱い立場にある人々に手を差し伸べられる志と能力を持っている人物です。
 例えば、マザー・テレサを例にとってみましょう。彼女は、強くて頼りがいがあるといった一般的なリーダー像とは多少異なるかもしれません。ですが、彼女は多くの貧しい人々から「ありがとう」と言われる力を持っています。彼女こそ、私たちが考える真のリーダーのひとりなのです。

 確かな学力と幅広い教養を兼ね備えることで、リーダーにふさわしい人格を持ち、人々の共感を呼ぶことができる人物。それこそが、「自立と共生」が重視される21世紀にふさわしいリーダー像であり、私たちが輩出したい人材像なのです。

2.リーダーに必要な「自己教育力」を支える「言葉の力」と「謙虚さ」

 私たちが輩出したい真のリーダーに必要な能力とは、自ら問題を発見し、解決できる「自己教育力」です。
 困っている人に手を差し伸べるにしても、そもそも何が問題であり、それに対してどのような課題を設定し、その解決のために何をするのかを考えられなくてはなりません。幅広く、多面的に、そして重層的に物事を考えられる力が必要なのです。ただ与えられた作業や役割をそつなくこなすだけの人はリーダーたり得ません。自ら思考し、自ら目標を定め、自ら学び、自らを鍛え、より高みに向かっていこうとする強い意志を持った人、つまり自らを教育できる「自己教育力」のある人がリーダーたり得るのです。

 「自己教育力」を支える要素は、大きく以下の2点と考えています。

(1)言葉の力
1)言葉なくして「思考力」なし
 人は考える時、必ず言葉を用います。良くある勘違いなのですが、自分の中に概念や思考が浮かんでから、その後にそれを定義する言葉が生まれると思いがちです。実は、先に言葉があってこそ、初めて自分の中に生まれた概念や思考を知覚し、認識することができるのです。その人の持つ語彙の数が、即ちその人の持つ思考の数なのです。多くの語彙を持たずして、リーダーに求められる高いレベルの多面的・重層的な思考を行うことは不可能です。

2)言葉なくして「思いやり」や「感動」なし
 思考と同じように感情に関しても、先に言葉があってこそ知覚・認識することができるのです。それらの言葉が持つ繊細な違いを認識したり使い分けたりすることができなくては、本当に他者を「思いやる」ことや、心の底から「感動」することはできません。
 例えば、日本語の「愛」という語彙は主に「愛欲」を意味しますが、カトリックの「愛」は「慈愛・慈悲」です。この「慈愛・慈悲」という言葉を知らなければ、カトリックの「愛」を理解できません。また、「好き」という語彙にも、「いとおしい」「愛している」「憧れる」「慕う」など、繊細で多様な感情が内包されています。それらの多くの言葉を知らなければ、全ての感情が「好き」というひとつの言葉に定義されてしまい、全く平板なものになってしまうのです。
 リーダーには、多くの人々の繊細で多様な気持ちを理解し共感する能力が問われます。多くの語彙なくして、そのような高いレベルの「思いやり」や「感動」は持ち得ません。

3)言葉なくして「人間関係を深める力」なし
 人々が意思疎通や対話を行う時も、言葉が大変重要な役割を果たします。リーダーとなる人は、より多くの人々と深い人間関係を築いていく必要があります。多くの語彙なくして、人間関係を深めることも、人と協調して何かを行うことも困難なのです。

 以上1)~3)のことから、本校では「言葉の力なくして、真のリーダーたり得ない」と考え、「多くの語彙を持つこと」を重要視しています。

 世界を認識するために、人は言葉を尽くします。ですが、どれだけ言葉を尽くしても言葉では表現し得ない「沈黙」の領域は残ります。実は、そのような言葉では語れない領域までをも感じ取る力が、真のリーダーには求められるのです。その領域は、言葉を尽くした先に初めて現出します。言葉の重みを知っているからこそ、それを超えた「沈黙」の重みを理解できるのです。

 たくさんの言葉・語彙を学ぶ時期は、大人になってからでは遅いと考えています。最も多感な思春期(中高時代)にこそ、言葉の瑞々しさに触れ、言葉の重みを知ることが、その後の人生にとって大きなプラスになるのです。

(2)謙虚さ
 全ての者を包み込む懐の深さは、その人が謙虚になって初めて生まれてくるものです。自分がいかに小さな存在であるかということに気付かなければ、他人への優しさもうわべだけのものになってしまうでしょう。
 実は勉強とは、人を謙虚にさせるものであると思います。厳しい勉強を通して物事を知れば知るほど、自分の知っている範囲の狭さ、まだ知らない世界の広さに気付くのです。いわゆる「無知の知」を認識することで、自分の学力の不足を感じると同時に、さらなる努力の必要性にも気付きます。
 己の存在の小ささを知ることが、逆にその人を強くしていきます。そして、さらに高い目標を掲げて理想を追求しようとする、リーダーとしての資質が育まれるのです。

3.真のリーダーに必要な能力を育成するための指導方法

 先述した能力の育成を目的に、本校では様々な指導を行っています。特に以下の3点は、本校ならではの特色ある指導であると思います。

(1)言葉の力の育成
 基礎的な言語能力の育成は、なるべく早い段階から行うことが大切と考えています。中学1年生から「朝読書」、中学2年生から「小論文」の指導を行うなど、入学後の早い時期から徹底的に指導を行います。また、国語の授業では「群読」に取り組んでいます。ひとつの作品をパフォーマンス(身振り手振り)を交えながら複数の人で朗読する演劇の手法です。これが現在では、下記の「演劇」講座に発展しています。
 そして、多面的・重層的な思考力のベースとなる豊富な語彙力を獲得させるための手法のひとつとして、「漢検」をここに位置付けています。語彙力は早期に身につけるべきとの観点から、特に中学生に対して受検を勧めています。また、「漢検」合格という目標を自らに設定し、それをクリアしていくことは、「自己教育力」の涵養にも繋がると考えています。

(2)選択芸術講座
 中学2年生では、バイオリンや陶芸、絵画、演劇などの中からひとつを選び、1年間、第一線で活躍する専門家の指導が受けられます。
 真のリーダーにふさわしい人格を養うためには、幅広い教養と感動する心を養うことも欠かせません。人の痛みを知り、人間的な幅を身につけるには、芸術的な感性も大切です。言葉の重みを超えた領域を感じ取る感性を養うのです。美しいものに感動する心は、国境も民族も越えた人類共通のものでありましょう。これからのグローバル社会で活躍できるリーダーにとって、人類普遍の感性を培うことは必須の要件と考えています。また、苦労して楽器演奏や絵画制作を行うことで、芸術の偉大さ、ひいては自分の存在の小ささも知ることができるのです。

(3)聖光塾
 正規の授業カリキュラムや学年の枠を超えた、体験型の学習講座です。「天体観測講座」「裁判の傍聴」「明治・大正の文学を読む」「手話」「競技カルタ講座」など、生徒の知的好奇心を喚起するアカデミックな内容から、生きる力を育む体験的な学習まで、幅広い活動を展開しています。
 様々な体験活動の中で、例えば「この技術はこう使えるのではないか?」「この条件が変われば結果も変わるのではないか?」といった、様々な考え方や物事を仮説を持って考える力も育成できます。頭の中だけで理解するのではなく、実際に手を動かして体験させる事が大切なのです。授業や学校生活で得た知識や経験を繋ぎ合わせて、「体験知」とする場を提供しています。


※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。

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