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ビジネスを動かす文章力 VOL.02 前編 文章力UPは筋トレのごとし。ポイントは「書く量」と「読む量」 Business Insider Japan 統括編集長 浜田 敬子 さん

PROFILE浜田 敬子(はまだ けいこ)

1989年朝日新聞社入社。93年に「週刊朝日」編集部、99年に「AERA」編集部へ。女性の働き方や雇用問題、国際ニュースを中心に取材。副編集長、編集長代理を経て2014年から「AERA」初の女性編集長就任。ネット媒体とのコラボや外部プロデューサーによる1号限りの「特別編集長号」などの新企画を連発。16年から朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして新規プロジェクトの開発などに取り組む。17年に朝日新聞社を退社し、オンライン経済メディア「Business Insider Japan」統括編集長就任。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」やTBS「あさチャン!」などのコメンテーターとしても幅広く活躍。著書に「働く女子と罪悪感」(集英社)。

若い人にニュースを読んでもらうために

Business Insider Japan (以下BI)統括編集長としての主な仕事は、記者や専門家から上がってきた原稿をチェックして、事実確認をし、より読みやすくなるようにブラッシュアップする編集作業です。私が朝日新聞社を辞めてオンラインメディアであるBIの統括編集長を引き受けたのは、若い人たちにきちんとしたニュースを読んでもらいたかったから。ニュースを読むことは人生やキャリアにおいて“武器”になりますし、自身の身を守ることにもつながります。今の若い人は情報を無料で入手することに慣れているので、有料の新聞や雑誌に書いてもなかなか届かないというジレンマがありました。
若い人にニュースを読んでもらうための工夫としては、文章はなるべくシンプルに短く。Webは記事全体のボリュームが見えませんし、途中で前に戻って読むこともあまりしません。若い世代は凝った構成の文章も読み慣れていないので、途中で内容を理解できなくなってしまう可能性があります。連載記事も初回から順番に読んでくれるとは限らないので、有料版以外での連載企画はやめました。記事に複数の事象を詰め込まず、1記事1事象が基本。その1本だけ読んでも理解できる記事にしています。

新人時代に鍛えられた文章構成力

私は入社当時、原稿を書くことが本当に苦手でした。書くのが遅いし、デスクが入れる直しで原稿はいつも真っ赤。先輩の書き方をマネしたりしましたが全然うまくならない。自分は記者には向いていないのでは、と何度も思いました。それが変わったきっかけが、入社6年目に週刊朝日で林真理子さんの対談の連載を担当したことです。
初回の原稿をまとめ上げて林さんに見せたところ、「対談の面白さが生きてない」と言われました。何度か書き直してようやくOKに。その後も林さんに徹底的に鍛えていただきました。連載は5年間担当したので、構成した対談は約250本。文章も筋トレと一緒で、それだけ続けると自然に力もつきます。2時間の対談を5ページにするにはざっと内容を5分の1ぐらいに圧縮しなければならないのですが、大胆に削ったり構成を入れ替えたりすることで、自然と原稿もサッと書けるようになっていました。脚本家の内館牧子さんとの対談では、「こんなに構成がうまい人見たことがない」と褒められ、林さんからも「ハマちゃん、すごいね」と言われたときはうれしかったですね。

文章力はトータルな力

文章力はキャリアとはあまり関係がないと思います。ベテラン記者でもわかりづらい文章を書く人はいます。BI編集部に、原稿が最初から上手だった若い女性記者がいます。彼女は学生時代からブログを書き、他のメディアでも執筆していたそうです。自分の考えを書く訓練を積んできたから、記者経験はなくても、読み手に伝わりやすい文章が書けるのです。良い文章とは、まず自分の考えをロジカルに首尾一貫して伝えているかどうか。つまり構成力です。これは「書く量」に裏打ちされた力だと思います。
良い文章を書くには、推敲力も大切です。良くない文章の典型が、主語と述語が呼応していない、主語が途中で別の人や物にすり替わっている、余計な接続詞や修飾語が多い、同じことを繰り返し言っている、など。これは「読む量」に裏打ちされた推敲力が足りないから起こるのではないかと思います。ただ、この“欠点”は意識すれば直せます。主語と述語が呼応しているというのは文章の基本。それが整っているだけで、すっと読みやすい文章になります。
さらに言えば、「書く力」だけ備わっていてもダメなのです。私の仕事で言えば、取材のときに相手の話を聞いて、どこが大事なのか、要点をうまく抽出しているかが問われます。むしろそれがうまくできていれば、書くのにそれほど苦労しないはずです。書く力には聴く力や情報を取捨選択する力も関わってきます。
文章はある程度気をつければ上達するテクニックと同時に、「何を伝えたいか」という書く人そのものの思考が問われるところがあります。そのためどんな職業でも文章力があれば、自分の考えをうまく相手に伝えることができます。基本的な文章力を身につけることは、ビジネスの大きな武器になると私は考えています。

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