歴史上の人物になりきって読んだ少年時代から、石仏や道祖神に込められた名もなき人々の思いへ、そして『竜馬がゆく』をきっかけに自転車で四国を旅した学生時代まで。「人と社会の営み」への関心のルーツをうかがいました。
社会を動かした人々の生き方に憧れた少年時代
- 質問:── まず、子どもの頃のお話からお聞かせください。
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子どもの頃は、家にあった『日本の歴史』という学習漫画を何度も読んでいました。今振り返ると、自分でも驚くくらいです。それも、ただ読むだけではなく、歴史上の人物になりきって読んでいました。
戦国時代であれば戦国武将に、明治維新であれば維新の志士になったつもりで読む。社会が大きく動く時代に特に惹かれていました。鎌倉幕府の成立から戦国時代、そして明治維新。社会が大きく変わる中で、一人ひとりの生き方が歴史を動かしていく。そのダイナミズムに強く魅力を感じていたように思います。
小学校の図書館で出会ったジョン・F・ケネディの伝記も印象に残っています。キューバ危機への対応や、アポロ計画のような壮大なビジョンを掲げて国を導いていく姿が、とてもかっこよく見えました。
長野の農村で育ちながらも、そのような本と出会ったことで、「いつか自分も何か大きなことを成し遂げたい」という思いを抱いていました。
興味は「偉人」から「名も知らない人々」の歴史へ
- 質問:── 歴史への興味は、その後も広がったのですか。
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中学校では郷土の歴史を研究するクラブに入り、そこで夢中になったのが石仏や道祖神でした。当時、クラブの友人とバイブルのように繰り返し読んでいたのが、田中康弘さんの『信濃の道祖神』という本です。それまでは歴史上の英雄や偉人に関心を寄せていましたが、次第に「普通の人たちはどのような思いで生きていたのだろう」と考えるようになりました。なぜこの石仏を建てたのか。なぜこの場所に道祖神があるのか。その人は何を願っていたのか。そうした背景に思いを巡らせることが面白かったのです。
高校では歴史研究会に入りました。当時はちょうど高速道路の建設が進んでいて、各地で発掘調査が行われていたこともあり、私も古墳の発掘などを手伝わせてもらいました。土を掘り、古代の遺物が見つかるたびに、「どんな人がここで暮らし、何を考えていたのだろう」と想像していました。
今思えば、歴史そのものに惹かれていたというより、人と社会の営みに関心があったのだと思います。
『竜馬がゆく』を読んで、自転車で四国へ向かった学生時代
- 質問:── 大学時代はどのように過ごされたのですか。
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当時の私は、将来について具体的な計画を持っていたわけではなく、「何にでもなれる状態でいたい」と考えていました。
そんな大学時代に大きな影響を受けたのが司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』です。
読み終えたとき、「このままではいられない」と強く感じました。それで、坂本龍馬が歩いた場所をたどろうと、自転車を買って四国へ向かったのです。
高知に着いた初日は桂浜で野宿をして、朝起きたら犬に吠えられていました。そこから四国を回り、さらに九州へ渡りました。温泉に入って、駅や建物の軒先で寝袋を広げて寝る。そんな生活を続けながら、一日100キロから150キロを走る旅でした。
龍馬の軌跡をたどりながら、自分自身の生き方について考えていたのだと思います。
就職活動では新聞社やテレビ局などを志望していました。時代が変わる瞬間に立ち会い、それを伝えるジャーナリストという仕事に魅力を感じていたからです。
しかし、就職活動を進める中でNTTと出会い、通信事業の魅力にも強く惹かれました。ジャーナリストは歴史が動く瞬間に立ち会い、それを自らの言葉で伝えることができます。一方、通信は多くの人々の思いや言葉が行き交う社会インフラそのものです。私は、この社会インフラの維持と発展に大きな価値があると考えました。
振り返ってみると、歴史に夢中だった少年時代も、石仏の向こうにいる人々に思いを巡らせた中高時代も、通信の仕事を選んだ大学時代も、根っこは同じだったのかもしれません。
ずっと私は、「人と社会の営み」に興味を持ち続けてきたのだと思います。