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価値創造型人材に必要な日本語力

「知識」よりも「問い」を育てる、深く読む力

歴史上の人物になりきって読んだ少年時代から、石仏や道祖神に込められた名もなき人々の思いへ、そして『竜馬がゆく』をきっかけに自転車で四国を旅した学生時代まで。「人と社会の営み」への関心のルーツをうかがいました。

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「深く潜る経験」が、考える力を育てる

質問:── 読書や学びを振り返る中で、今につながっていると感じる経験はありますか。

現代は、物事を深く考えることがますます大切な時代になっていると感じています。情報にアクセスするだけであれば、インターネットもありますし、AIもあります。けれども、本当に価値を生み出すのは、その情報をどう理解し、どのような問いを立てるかという部分です。

遡ってみると、私自身は、大学受験の際に物事へ「深く潜る経験」をしていたように思います。

当時は通信添削教材を使って受験勉強をしていましたが、高得点を取るためには、制限時間内に問題を解くことよりも、まずは問題そのものを徹底的に理解することが大切だと考えていました。分からないことがあれば別の資料を調べ、問題文を何度も読み返し、納得できるまで考え、一つの問題に何時間もかけるようにしていました。

私にとって大切だったのは正解を出すことではなく、「何が問われているのか」「なぜその答えになるのか」を理解することでした。

インタビューに答える桜井 伝治さん
インタビューの様子

AI時代に問われるのは「知識」ではなく「問い」

質問:── AIが急速に普及する今、子どもたちに必要な力は何だとお考えですか。

AIの登場によって、情報収集や整理は飛躍的に効率化されました。その一方で、人間に求められる力は変わっていくと思います。

例えばコンサルタントという仕事では、これまで若手社員はリサーチや分析を重ねる中で思考力を磨いてきました。この経験が一人ひとりの実力となり、成果の差にもつながっていました。しかし、そのプロセスの多くをAIが担えるようになったことで、実力を身につける「下積み」の機会が失われつつあります。

では、顧客や社会に対して生み出せる価値の差はどこに生まれるのでしょうか。私は、その人がどれだけ深く考えた経験を持っているかだと思います。

AIは問いに対して答えを返します。しかし、浅い問いには浅い答えしか返ってこないし、深い問いには深い答えが返ってくる。AIによって答えを得ることが当たり前になっていく時代だからこそ、人間には、どのような問いを立てるか、そして得た答えを鵜呑みにせずに受け止め、本質まで掘り下げられるか、そういう力がこれまで以上に求められるようになるはずです。

そして、これらの力の土台になるのが言葉の力です。

私は日本語力というのは、すべての学びの基礎だと思っています。数学の問題を解くにしても、まず何が問われているのかを正しく理解できなければ答えにはたどり着けません。それは英語でも、ほかの言語でも同じです。日本語は、深遠な日本文化や、日本文学の入り口であると同時に、物事を理解し、問いを立て、考えを深めるための基盤となる力だと考えています。

答えを急がず、問い続ける経験を

質問:── では、これからの子どもたちには、どのような経験が大切になるのでしょうか。

私は、何か一つのことを徹底的に掘り下げる経験が大切だと思っています。

子どもはもともと、好きなことには驚くほど集中します。興味を持ったことを調べたり試したりしながら、どんどん深く入っていく。その姿は、とても自然な学びの形だと思います。

社会に出れば、最終的にはそれぞれが持つ強みが、その人ならではの価値につながっていきます。だからこそ、これからの教育は「突き抜けた長所」に、より力点を置いていく必要があると考えています。

AIの進化によって、もっともらしい答えが簡単に手に入るようになっているからこそ、「本当にそうなのだろうか」と批判的に考える力が重要になります。

大切なのは、答えを急ぐことではなく、自分なりの問いを持ち続けることです。

今は、効率やタイムパフォーマンスが重視される時代になっており、一つのことだけに没頭する機会はどうしても少なくなっています。だからこそ、子どもたちには、今しか味わえないその贅沢な時間の中で、自分なりの問いを持ち、それを深く掘り下げる経験をしてほしいと思います。

問い続ける力は、一生を支える学びの土台になります。

この記事は以上です

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