2023年から、関東近辺の複数大学で文章力の指導を行っている。その中から、高崎健康福祉大学(群馬県・高崎市)の農学部の学生に対する「日本語表現法」の教育実践を紹介したい。

論理的なレポートが書けるように

最初のきっかけは、高崎健康福祉大学から日本漢字能力検定協会を通じて、学生の日本語力、特に論理的な文章を書く力を付けさせてほしいとの要請であった。話を聞くと、専門の先生方から学生の文章について、「短いチャットは書けるが長い文章が書けない」「レポートの日本語が論理的でない」「レポートの内容以前に文章力の改善が必要」との声が挙がっているとのことだった。こういった教育現場のニーズから、「日本語表現法」という授業は生まれた。

「日本語表現法」のシラバスの作成に当たっては、「文章読解・作成能力検定(以下、文章検)」のシラバスを基準に組み立てた。レベルは、当初は文章検3~4級レベルを設定したが、その後、準2級~3級にレベルを上げている。文章検では、基礎力(語彙力)、読解力(読む力)、文章力(書く力)を3本柱としている。この力をバランス良く伸ばすことと合わせて、以下のようなことも意識して授業を展開した。

また、文章力の基礎が語彙力であることから、毎回の授業で50個の語彙(読み方や意味がわかりにくい語彙、社会生活でよく耳にする慣用句や四字熟語など)の意味や使い方などを考えることを予習内容とし、毎回、授業の初めに小テストを行った。学期を通して、学生は約600の語彙などを学んだことになる。

毎回の授業の進め方と評価

評価は、中間試験と修了試験、授業への参加度と最終レポートを組み合わせて行った。中間試験では文章検4級(のちに3級)の過去問、修了試験では3級(のちに準2級)の過去問を使用し、各々合格点が取れているかで評価した。

基本的な授業の進め方は90分の授業で3つのテーマを扱い、1つのテーマについて、
① 教師からの説明
② 学生の意見交換
③ 問題演習
の構成とした。

つまり上記の①②③を3テーマについて行うということになる。②の学生の意見交換では、大学内のWEBシステムの機能を使い、意見、回答、教師からの「お題」に対する短い文章などを書いてもらい、それをクラス全体で共有する形を取った。学生にとっては、教師からの説明以上に、同じ年代からのさまざまな視点や考え方に触れることが大きな刺激になったようである。

文章力は実は伸びやすい

毎年度の学生の評価をしていて気づいたのは、「文章力」つまり「書く力」は、実は「読む力」以上に伸びやすいということである。中間試験と修了試験の点数を比較すると、(試験のレベルも上がるのだが)多くの学生は点数を上げる。点数アップの大きな理由は、「書く力」の点数の伸びによるものであることがわかった。

授業をして気づいたのは、そもそも論理的な文章の書き方を知らない学生が多いということだった。最初は、思いついたものを思いつくままに書き散らし、途中で行き詰ってしまったり、言いたいことがよくわからない文章を書いてしまったりする学生もいた。しかしながら、そういった学生も、文章の書き方のルールを理解し、一つ一つ段階を踏んで書いていけば、最終的にきちんとした文章が書けることを実感し、自信にもつながったようだ。

また、さまざまなテーマで意見文を書き、その意見文を他の学生が書いたものと比較することで、新たな気づきや、自分の意見を再検討したりする学生も少なくなかった。これまで意識していなかったテーマの文章を書くことで、社会のさまざまな現象と自分自身を結び付けることができたと感じた学生もいた。

学生からの意外な反応

講義終了時のアンケートなどを見ると、日本語の文章を書くことに自信を持ってくれた学生の声を多く聞くことができた。

また、これはやや意外なことだったのだが、毎回の授業の始めに行う小テストの反応が良かった。大学受験から解放された後、自己学習の習慣を再度取り戻すきっかけになったという学生が多くいた。

敬語や手紙の書き方などについても役立ったという声も毎学期多く聞かれる。高校までに、敬語や手紙の書き方などについて学ぶ経験があまりなかったというのがその理由のようである。メールやチャット全盛の現代、手紙の時候の挨拶から感じる日本の季節感や、相手や場面に応じた適切な敬語の使い分けなどは、学生の目にはむしろ新鮮に映ったようだ。そして、それらの背後にある、人とのコミュニケーションにおける基本的な姿勢である「相手への配慮」が、読み手に読みやすい文章を書くことにつながっていることも、「日本語表現法」の授業を通して学生には感じ取ってもらえたのではないかと思う。

※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。

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