
「文章力」でつなぐ IT時代の人材戦略
株式会社インテック
北陸産業事業本部 北陸産業第一システム部 シニアハイエンドスペシャリスト
大橋久直 様
会社プロフィール
株式会社インテック
事業内容:技術研究、ICTコンサルティング、ソフトウェア開発、システム・インテグレーション、ネットワークサービス、アウトソーシングサービス
代表者:疋田秀三
所在地:〒930-8577 富山県富山市牛島新町5-5
設立:1964年1月11日
従業員数:3,825名(2025年3月1日現在)
HP:https://www.intec.co.jp/
PROFILE
大橋久直 様
『ITで、社会の願いを叶えよう。』
インテック株式会社は「いつでも、どこでも、誰もがICTの恩恵を受けられる社会の実現」を理念に掲げ、富山県で創業以来60年以上にわたり、情報通信技術(ICT)の研究・開発からアウトソーシングまでを一貫して提供する国内最大級の独立系システム・インテグレーターです。金融、行政、医療、製造、流通など多様な業界に向けて、基幹業務システムの構築やネットワークサービス、クラウドソリューション、セキュリティ対策などを展開しています。1985年には特別第二種電気通信事業者として第一号認可を取得し、EDI(電子データ交換)事業では国内トップシェアを誇ります。近年では、AIや3Dホログラムなど先端技術の融合による新たな価値創造にも取り組み、地域社会とともに持続可能な未来の実現に貢献しています。
北陸産業事業本部は、インテック発祥の地である富山県を中心に、富山県・石川県・福井県・長野県を担当エリアとしています。他エリアでは、部署ごとに担当業種が分かれていることも多いのですが、当本部では産業系を中心として、全ての業種を担当しています。いわば、インテックの縮図といってよい部署です。
当本部では、2025年現在の人材育成戦略のテーマとして以下の二本柱を掲げています。
文章力強化
「文章力」の有無は、それまでに各自が培ってきた素養に拠る部分が大きく、それを計画的に成長させることは難易度が高いと考えています。そのためにも、敢えて企業側が人材育成戦略のテーマに掲げることで、社員が学ぶきっかけを作ることが重要だと考えました。
リーダー育成
リーダーは、あらゆる仕事を前に進める際の中心的な役割を担います。働き手が減っているこの時代において、企業として意図的にリーダーを育てていかないとプロジェクトが維持できない状態に陥ってしまう、という危機感がありました。
当社は、いわゆる「SIer(エスアイヤー)※1」であり、多くのエンジニアが在籍しています。仕事の中で大きな役割を果たしているのが、文書(ドキュメント)の作成業務であると言っても過言ではありません。
どのようなシステムを構築するかを言葉で表現し、それを顧客に確認してもらい、修正し、実際に作っていく。これらの作業の接点は、すべてドキュメントに書かれた文章で行われます。その完成した文章の質とそれを書く効率が、サービスの品質や生産性まで全てに関わってきます。「SIer」の仕事において、文章の位置づけは非常に重要です。
「SIer」ではシステムの設計書について、その内容の正しさをチェックするレビューを行います。ある調査によると、レビュー指摘の内訳分析において、書かれている内容の誤り以外にも日本語の表現や文章の誤りに関する指摘が25%~26%あることが分かりました。私がプロジェクトマネージャーとして関わってきた開発案件でも、この数値は大きく変わりませんでした。これはつまり、社員の「文章力」を鍛えることで25%~26%の生産性を向上できる可能性を秘めているということです。それはもちろん、サービスの品質や生産性の向上にも繋がっていくことは間違いありません。
※1 システム・インテグレーターの略称。顧客の業務を分析し、課題解決に向けたコンサルティングからシステムの設計、開発、運用・保守までを請け負う企業。
現代の「SIer」にとって、生成AIは使いこなすことが欠かせないツールです。AIの進化は目覚ましく、子供の成長よりも早いスピードで、日々できることが増えていっているのを感じます。
そして、このAIを使う際のプロンプトの作成についても「文章力」は欠かせません。プロンプトの書き方のコツのような情報は溢れていますが、肝心なのはそういった小手先の技術ではありません。どのようなことがやりたいのかという指示が明確に言語化されていなければ、後で見返した際や他者に共有した際にも伝わりません。人と人はもちろん、人とシステムとのインターフェース(※2)になるものが文章です。そして、AIから望ましい結果を引き出すために、効果的な「プロンプト(指示・質問)」を設計するプロンプトエンジニアには「文章力」が備わっていることが必要不可欠なのです。
AIとは、それを使う人にとって、いわば「良き隣人」であると考えています。自分の文章を添削する際などもAIにも相談をしてみると、よりよい表現の仕方やより端的でロジカルな表現をアドバイスしてくれます。それでもやはり、人間とは思考回路が異なる部分があるので、どうしても限界があります。そこは人間がジャッジをしながら、プロンプトそのものも調整していく。AIにすべてを任せるのではなく、会話しながら一緒に創り上げていくという感覚が大切だと思っています。
※2 コンピュータで、異なる機器・装置のあいだを接続して交信や制御を可能にする装置やソフトウェア。また、装置と人間との接点である入出力部分。
もちろん、「文章力」が問われるのは理系人材だけではありません。
例えば、どの社会人でも稟議書を書く機会は多いと思います。稟議書では、詳しく長く書けばよいというわけではなく、手短に端的に伝わる文章を書く必要があります。そのために情報を削ぎ落とし過ぎてしまうと、判断に必要な材料が抜け落ちてしまいます。かといって不必要な情報まで書き込んでしまうと、読み手はかえって混乱します。いかに過不足なく伝えるかというのは、作成者の「文章力」そのものに他ならないと考えます。管理職が稟議書を見たときに、「書かれている日本語の意味が分からない」と言うことがあります。その指摘を減らすことも「文章力」強化の目的のひとつと捉えています。
また、特に営業職は個人プレーの要素が強い職種であり、個人の能力に頼ってしまう部分が大きいと感じています。ですが、それで終わらせることなく、各人の能力を高いレベルに揃えていくことを諦めてはいけません。鍛えていくべき能力要素のひとつとして、提案力や行動力などに加えて「文章力」も必須であると考えています。

研修の流れは、①まずはアセスメントを受けて現在の実力を把握し、②eラーニングを使って約1か月半の学習を行いました。その後、③同レベルの別問題にて再度アセスメントを行い、前後の伸長度を測るようにしました。そして、④年に1度会社を会場(準会場)として『文章読解・作成能力検定(文章検)』2級に挑戦する機会を設けました。
この形であれば、学習前後の変化が数値で確認できるため、受講者にとっても成長の自覚に繋がりやすいと考えました。最後には本番の資格試験に挑戦する機会を設けることで、 受講者のモチベーションはより一層高まったと思います。また、人材戦略担当チームとしても研修の投資対効果を可視化することができます。誰にとっても分かりやすい、非常に良い形だと考えています。
2025年度は、人材育成3か年計画の真ん中の年に当たります。この3か年計画が終了するまでは、希望者に受講をさせたいと考えています。まずは意欲の高い社員が模範を見せて、他の社員のモチベーションを引き出すことで、数年かけて北陸産業事業本部の全社員に受講させたいと考えています。
実際に取り組んでみたところ、アセスメントやeラーニングについてはWebベースで進捗管理ができ、受講者へのリマインドも自動化できた点が非常に使いやすく感じました。全てがワンストップで運用できる、今の時代に合った効率的なシステムであると思います。eラーニング『論理的文章力トレーニング Learning』も、マイクロラーニング(※3)形式で非常に手軽で、業務の隙間時間に取り組むことができました。一方で「もっとじっくり学習してみたい」という意見もあったため、2025年度からはテキスト『文章検 公式テキスト』も提供するようにしています。
※3 1~5分程度の短時間で完結する小さな学習単位を、スマートフォンやパソコンなどのデバイスで学習する手法。
自分の「文章力」を可視化されることについて、テストを受け慣れてきている若手社員にとっては、ほとんど違和感はなかったと思います。一方でベテラン社員にとっては、多少の抵抗感があったかもしれません。ですが当社の人材育成戦略として、まずは各自の能力を定量化することが今後の方向性を明確化するためにも必要なことだと捉えています。
社内の人事評価を考えた時も、「自分がどれだけ能力を伸ばしたか」「どのような資格を取得したか」ということがはっきりと報告できるようになりました。そういう意味でも、社員と経営の双方に配慮された形になっていると考えています。
今回、1回目のアセスメントで7割以上を得点できた社員には「これで卒業してもいいよ。2回目のアセスメントは受講しなくてもOKだよ。」と伝えました。しかし、「ぜひこの後も受講したい」という意欲的な社員も出てきています。それに伴い、自己研鑽が後回しになりがちな社員や、文章に苦手意識を持つ社員も刺激を受け始めているようです。模範を見せて周囲の社員のモチベーションを引き上げる作戦は、上手くいっていると感じています。
voice
受講者の方々の声
受講者のお二人からもお話を伺うことができました。
北陸産業事業本部 北陸産業第一システム部 SAC課
毛利沙織 様

PROFILE
2007年に株式会社インテックに入社。システム開発やサービスデスク運用業務などを経て、2018年より北陸産業事業本部に在籍。2024年より人材戦略の事務局を担当しつつ、自身も「論理的文章力育成コンテンツ」を受講。
もともと仕事で文章を書く機会は多いので、以前から自分の「文章力」を伸ばす必要性は感じていました。ですが、自分の文章を客観的に把握したり体系的に伸ばしたりしていこうとするには、どこから取り組んでよいのか分かりませんでした。今回、会社からこのようなきっかけをいただいたことで、積極的に挑戦してみたいと思いました。
とはいえ、日々の仕事においてはどうしても自己研鑽よりも業務が優先になります。そんな中でも、eラーニング教材は自分の空いている隙間時間に学習を進められる仕組みになっていたため、スムーズに学習を進めることができました。
特に要約文の学習が非常に実践的だったと感じています。伝えたいことを端的に分かりやすく書こうという場面で、残すべき情報と削除してもよい情報を素早く峻別できるようになりました。また、これまでは事実と意見を混同して書いていることも多かったことに気付かされました。文章を書く場面はもちろん、口頭によるコミュニケーションの場面でも使えるスキルが身についてきたと感じています。
北陸産業事業本部 北陸産業第一システム部 SAC課
香林風 様

PROFILE
2019年株式会社インテック入社。北陸産業事業本部に在籍し、主に産業系システム開発のプロジェクトマネージャーオフィスを担当しつつ、2025年度より人材戦略担当も担当。
つい先日、事前のアセスメントを受講し、受講結果を確認したばかりです。文章作成問題の場面設定が、難解なビジネスシーンなどではなく身近な親しみやすいテーマだったため、学習の「やらされ感」が少なかったことが良かった点です。社会人経験が無くても、自分ごととして取り組める内容だと思います。受講結果には、非常に細かい部分も含めた的確なフィードバックが書かれていました。自分の弱みを知ったうえで改善意識を持ってこれからの学習に取り組めるので、非常に学習効果が高そうだなと期待しています。
在宅勤務などの働き方も増え、社内の人でもチャットでやり取りする場面が増えました。従来の対面によるコミュニケーションように表情や身振り手振り、声のトーンなどには頼れず、文章だけで勝負しなくてはいけない環境になったことを実感します。実際に会ってみるととても優しい方なのに、チャットになると急に怖い印象になる方などもいて、人と人との関係性を築くためにも「文章力」が必要不可欠な時代になったと痛感しています。
プロジェクトの品質評価を行う場面では、定量的な部分だけでなく定性的な面も評価します。プロジェクトメンバーにヒアリングを行い、最終的に評価報告書にまとめます。その際に、メンバーが伝えたいことを言語化し、説得力のある材料を集めて報告できるかどうかが肝心です。やはり「文章力」がカギなのです。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。
