他者に適切に伝える力は必要不可欠
西尾市役所
総合政策部 人事課 厚生研修担当
課長補佐 遠藤景子 様/主任主査 杉浦祐介 様/主査 山田安利 様
主事 惠良裕恵 様/主事 松田美来 様
会社プロフィール
西尾市役所
事業内容:地方公共団体
所在地:〒445-8501 愛知県西尾市寄住町下田22番地
設立:2011年4月1日(最終市町村合併日)
職員数:1,681人(令和7年度)
HP:https://www.city.nishio.aichi.jp/
西尾市は約17万人の人口を有する、愛知県西三河地方に位置する城下町です。抹茶の産地として有名なだけではなく、大手自動車部品メーカーの工場が複数立地するなど、農・工・商の産業がバランスよく発展しています。また、豊かな自然でのアウトドアや季節のイベント、史跡や名所も魅力です。
今回、西尾市役所の職員研修を担当される杉浦様にインタビューを行いました。
他者に適切に伝える力は必要不可欠
西尾市の職員研修では、階層別研修や希望者研修などの集合研修、民間企業に職員を派遣したり民間企業の方々を受け入れたりして学びを得る人事交流など、様々な取り組みを行っています。集合研修についてはメンタルヘルスやハラスメント、仕事と育児の両立支援、ナッジ理論など多様なテーマを扱っています。新しいテーマを加える際には、その時代に合った旬な内容を実施するように心がけています。
今回実施した論理的文章力育成研修は、これまでに実施したことはありませんでしたが、以前から人事課では、他者に適切に伝える力は職員に必要不可欠と考えていました。なぜならば、市役所職員には、法令や要綱、議会の答弁書、市民への通知書、市役所内外へのメールなど、文章を作成したり、読み解いたりする場面がとても多いからです。さらにコロナ禍を契機に、職員間のチャットツールが導入され、文章を素早く正確に読解・作成することが求められるようになってきました。
文章力は非常に重要ということを職員の多くは分かっているとは思いますが、文章力を磨く機会はなかなかありません。業務の中で学び、年数が経って身についている人もいれば、文章力を磨くという意識をそもそも持っていない人がいるのが実態です。
また、文章力自体は同じ世代でも人によって差が大きいと感じます。例えば、新入職員について考えてみると、「フレッシュ公務員ノート※」というものを入庁後半年かけて作らせているのですが、その中で記録された内容を見ると、常にわかりやすい文章を心掛けている職員と、おそらく何も考えずにいきなり書き始めている職員がいて、両者にはとても差があると感じます。
※フレッシュ公務員ノート:公務員としての基礎知識を習得するためのクイズと、上司などの指導者と交換日記のように記録を残していく内容で構成されたノート
加えて、文章力を磨くための指導は基本的にはOJT※2です。実際の指導は、漢字の変換や敬語の正しい使い方といった指摘にとどまり、本質的に読み手に伝わる文章になっているかという目線で指導にあたっている職員は少ないのではと考えています。
※2 OJT:On the Job Training (オンザジョブトレーニング)の略で、実際の仕事を通じて指導し、知識、技術などを身に付けさせる教育方法のこと
こうした背景があり、論理的文章力育成研修を実施することにしました。
文章の育成は簡単なものではなく、講師による3時間の対面研修ですぐに効果が出るとは考えていませんでした。実際の研修の中には、すぐにでも役立てられる情報もありましたが、まずは意識づくりが主な目的でした。先述した通り市役所の業務は、文章力を試されるシーンばかりだと思います。そうした中で、自分のスキルアップの場として研修が活用され、「文章力を身につけたい、向上させたい」と思う職員を増やしていき、組織全体として文章力の向上に興味を持ってスキルアップしていく風土を作っていければと考えています。
研修の受講者アンケートを見ると、「業務に有効活用できると思います」「文章検(文章読解・作成能力検定)に非常に興味を持ちました」など、とても前向きな意見が多かったです。

分かりやすい文章を作るのに苦労する人や、分かりやすい文章を作れるが時間がかかってしまう人など、人によって悩みはさまざまです。
メールを1通作るにしても、パッと作った文章が論理的で分かりやすくなっているのが一番理想的です。このように短時間で分かりやすい文章を作れる人は、当然1日に取り組める業務量に差が出てきますし、情報伝達がスムーズで業務の質にも差が出てきます。こういったことができる人には、若手職員であっても議会の答弁書作成といったレベルの高い業務を任せることができます。これは、新しい学びの機会を与えることにもつながります。
文章力が自然と身につけばいいですが、実際にはそのようなことはありません。自分で意識して磨かないといつまでたっても能力は向上しないのです。例えば、高校生のうちから「書き方を意識しながら本を読んでみる」など、少し意識を変えるだけでも効果があると思います。若い頃から何かしら文章力の向上に取り組んでいると、社会人になったときに自分の武器になります。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。