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国語の授業で身に付けた資質・能力を評価する外部指標に 文章検・漢検を活用しています

秀明大学学校教師学部教授・秀明大学学校教師学部附属秀明八千代中学校・高等学校校長富谷利光 先生

関東 / 千葉

[私立] 秀明八千代中学・高等学校

秀明大学学校教師学部教授・秀明大学学校教師学部附属秀明八千代中学校・高等学校校長

富谷利光 先生

【経歴】千葉県立高等学校国語科教員、千葉県立中学校教員、千葉県総合教育センター指導主事を経て、2013(平成25)年より秀明大学准教授、2015年より秀明大学学校教師学部附属秀明八千代中学校校長、2017年より秀明大学教授、2019年より現職。千葉県立高等学校スーパーグローバルハイスクール運営指導協議委員も務める。
 

■学校紹介

 本校は1984年に開校以来、「知・技・心」を校訓に、「広く社会に貢献できる人間形成」を行ってきました。ESD(持続可能な社会づくりの担い手をはぐくむ教育)を柱として、「知るよろこび」「学ぶ楽しさ」を実感できる授業、「善と悪」「許せることと許せないこと」の規範意識や思いやりの精神とともに環境への貢献意欲を培う「心の学習」、目標を掲げて自分を変え「努力する習慣」で達成する夢の実現を、秀明大学と連携して推進しています。
 

■国語科の取り組み

国語科のカリキュラムの特色
 本校の国語科のカリキュラムの特色は、言葉で表現することを重視し、高校2年生、3年生において「国語表現」を週に2時間実施していることです。令和4年度からの新しい教育課程でも「国語表現」を実施することにしており、本校の教育活動の全体の中で最も重視している科目であると言えます。私自身も公立高校国語科教諭の時から「国語表現」の授業を担当し実践と研究を重ねてきましたが、表現する授業においては、いきなり完成形を書かせるのではなく書くための基本的な技術をスモールステップで習得できるようにすることが重要です。そうすることで、生徒も「書けるようになった」という自信をつけることにもつながります。
 また、近年、本校ではSDGsをテーマとした探究学習に注力して取り組んでいます。国語で身に付けた表現する技術を活かしながら、探究学習で社会問題をテーマに議論する、といったように国語での学びが探究的な学びへとつながっていくことを期待しています。
 

国語科の資質・能力の育成に向けたスキルコードの取り組み
 今回の学習指導要領の改訂ではコンテンツベースからコンピテンシーベース・資質能力ベースへの指導の転換が求められていますが、国語表現で扱うような表現することの指導は、そもそも汎用的な言語能力を育成するものでありコンピテンシーベースの指導であると言えます。しかし、国語における「読むこと」に関して言えば、教科書の文章を通して学ぶという性質上、授業での指導が教科書の文章内容の確認となぞりにとどまってしまうことも少なくありません。そのような問題を解決するために、本校では、教員が資質・能力を育成するための授業の流れを可視化するための学習の道しるべとして「スキルコード」を開発し、教員が授業やテストを準備する際の指標としています。スキルコードにおけるKスキル(基礎力)は「知識・技能」、Pスキル(実践力)は「思考力・判断力・表現力」、Rスキル(探究力)は「学びに向かう力、人間性等」に対応します。

<資質能力の整理―国語科におけるスキルコード>

 スキルコードではKを「教科書を学ぶ」ことと位置付けており、縦軸(K1、K2、K3)は学びにおける知識の深まりを表しています。Pは「教科書で学ぶ」こととしており、知識を別の場面で活用できる力と位置付けています。教科書の内容の確認となぞりだけではK1の学習となります。スキルコードを活用することで、授業で生徒に身に付けさせたい国語の力を明確に可視化することができ、そのための学習の道筋を授業者が自覚することで指導改善のきっかけとすることができます。
 

定期テストでのスキルコードの活用
 また、本校では定期テストにおいても全ての問題にスキルコードを明記し、それぞれの設問がどのスキルを問う問題なのかを生徒にも分かるように示しています。身に付けた力を初見の教材で活用できるということが本来のPスキルですが、これは、例えばある評論文を授業で学んだら、似たような評論文でその読み方を実践できるということです。この考えのもと、本校では、定期テストの問題に、学習した教材と似たような初見の題材を使った応用問題を必ず出題しています。Pスキルが問われるのは入試問題等でも同じだからです。そして、単に応用問題を出題するだけではなく、応用問題で問われることがその単元で学んだことと繋がっていることが重要です。そうすることで、生徒も授業で学んだことが身に付いたということを実感することができます。授業で学んだこととテストでの問いの繋がりを教員が明確にするために、また生徒がその繋がりを自覚し実感するためにスキルコードが役立っています。
 

■文章読解・作成能力検定・日本漢字能力検定の取り組み

 本校では、授業で身に付けた資質能力を外部試験で測ることを目的に、英語においては英検、国語においては文章検と漢検を授業に位置付けて実施しています。
 

文章検の取組み
―論理的・実用的文章の読解・表現の実践力(Pスキル)を評価する外部指標として

 文章検は、「高校生のための学びの基礎診断」に認定されている4級~準2級を中学1年生から高校2年生の全員で受検しています。文章検の出題は国語で学ぶ論理的・実用的な文章における「読むこと」と「書くこと」との関連性が高く、授業で取り組んだ内容をある程度網羅的に評価できる外部試験だと考え、国語科の評価指標として導入しました。授業で学んだ力を、初見の問題で実践する力(Pスキル)の測定として位置づけています。
 本校では文章検合格に向けた特別な講座等を行っているわけではありませんが、授業の中で文章検の問題を意識させるようにしています。例えば「国語表現」における「出来事の描写」「描写の方法」という単元で、読み手にイメージ豊かに伝わるように出来事を描写するという学習では、学習内容が文章検の「意見文」問題の第一段落に書く「事実の報告」と対応しますので、文章検の過去問題を単元末の確認問題として活用しました。また、ディベートの学習は、授業の内容が「意見文」作成の問題における「意見」「意見の正しさの論証」「異なる意見をあげて反論する」の内容と対応します。このように、国語表現の学習と文章検で問われる内容は非常に親和性が高いと感じています。生徒にとって「書くこと」は抵抗感が強い学習ですが、検定合格を目標にすることが、生徒の学習意欲の向上につながっています。
 令和4年度から始まる新しい教育課程においては、高等学校の必修科目が「現代の国語」と「言語文化」になりました。「現代の国語」は論理的・実用的な文章を扱う科目として位置づけられており、文章検によって測定できる資質・能力と合致しています。本校では、高1の「現代の国語」、高2・高3の「論理国語」「国語表現」の授業で 身に付けた資質・能力を測定する外部試験として、今後も文章検を活用できると考えています。
 

漢検の取り組み
―漢字・語彙の基礎力(K1、K2)を評価する外部指標として

 漢検は、中学1年生から高校3年生の全員で受検しており、国語科で学んだ漢字・語彙の力を測定する機会としています。漢検は漢字に関して多様な問題を出題しており、漢字・語彙に関するK1(個別の知識)のみならず、K2(知恵)の力も評価できる検定だと考えています。「個別の知識をつなげる」ということがK2(知恵)のスキルの基本的な指導方法になりますが、漢字に関しては語源を探るという学習が効果的です。語源を探る漢字指導として役に立つのは「漢字家族」という考え方です。例えば「固」という漢字は「コ」という読みがありますが、同じ読みを持つ「個」にも構成要素として「古」が含まれていることに気づけば、「古」(コ)というパーツ(形声文字の「音符」)をもとに「固」「個」「湖」といった漢字が作られていったことが理解され、個別の漢字の知識がつながっていきます。これが「漢字家族」で、漢字の七割を占める形声文字がこの考え方によって理解できるようになり、漢字を覚えるのが苦手だった生徒たちも、興味を持って漢字を学ぶようになります。そして、「曖昧模糊(あいまいもこ)」といった見たことのないような言葉に出会った時にも、「糊」の読みを推測できるようになります。また、漢検で出題される「熟語の構成」等も、K2(知恵)のスキルに相当すると言えます。熟語の構成種類に関しての知識を持っていれば、新しい熟語に出会った時にもその意味を推測する力となります。このように漢字・語彙の学習においては知識のつながり、深まりを意識しながら学ぶことが重要です。
 

検定実施の効果
 文章検も漢検も、生徒にとっては検定に合格するという学習目標を意識することで学習への意欲が高まり、また合格することで自信をつけることができるという効果があります。漢検に加えて文章検を実施し始めたことで、これまでなかなか漢検に合格できなかった生徒も文章検に合格して国語についての資格を取得することができるようになり、生徒の学習への姿勢がこれまで以上に前向きになりました。
 

■先生方へのメッセージ

 資質・能力ベースの指導においては、生徒に身に付けさせたい力を、「生徒に分かる形」で明確に提示し、その力が身に付いたかどうかを「生徒が分かる形」で評価することが大切です。
 従来の国語科の指導では、授業で身に付ける力が非常に「曖昧模糊」としていました。それが、文章検定・漢字検定という評価尺度で明確になります。これらは言語運用における基礎能力であり、さらにその先に「ものの見方・考え方」を深めるという役割が国語科にはあります。
 中学校学習指導要領にある「人間、社会、自然」について考えを深める方向は、本校が注力するSDGsにも関連し、持続可能な「共生社会」を目指すものとなるでしょう。その中で国語科の役割は、「他者を理解する」「多様性と調和について考える」学びにあります。国語科が培ってきた「読むこと」の学習は、多様なものの見方・考え方に出会い、それを自分自身の中で調和させていく営みです。大学入試で問われる評論・文学においても、ポストモダンにおける他者性や共生といったテーマがしばしば取り上げられています。こうした「内容知」の学習は、ともすると他教科の様相を呈してしまいますが、「近代」「脱近代」といった「言葉による思考の枠組み」として位置づけることによって、国語の学習が成立します。そして、言葉による「内容知」と、言語についての「方法知」とを相互に結び付けた学びは、教科書・教材を超えて実社会へと広がっていきます。
 このような学習過程を可視化したものがスキルコードです。基礎力から実践力、そして探究力へと広がり、深まっていく学びを、教師が生徒たちとともに創り出していくこと、それこそがSociety5.0に対応した学びであり、生徒たちが「知るよろこび」「学ぶ楽しさ」を実感することを期待しています。
 

<参考文献>
富谷利光編著(2019)『スキルコードで深める中学校国語科の授業モデルー中学校新学習指導要領のカリキュラム・マネジメントシリーズ』、学事出版

※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。


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