ストーリーと対話が生み出す『AI時代にも変わらぬ価値』
- 質問:── 現在でも、若い頃に培ったコミュニケーション力は生かされていますか。
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「相手の目標のために、自分には何ができるのかを考え続ける」。この姿勢によって信頼関係が築かれるという考え方は、その後、どの仕事に就いても変わっていません。
現在は、ウォルト・ディズニー・ジャパンの経営に携わっています。ディズニーと聞くと、夢やファンタジーの世界を思い浮かべる方が多いかもしれません。ただ、私自身が日々向き合っているのは、「人々は何を求めているのか」「何に心を動かされるのか」という問いです。
ディズニーの仕事の中心には、常にストーリーがあります。映画であっても、テーマパークであっても、キャラクターであっても、人の心を動かすものには必ず文脈と背景を持ったストーリーがあります。箇条書きの情報や、効率的に整理された説明だけでは、人の記憶にはなかなか残りません。ストーリーには流れがあり、感情があり、理由があります。だからこそ、人はそれを受け取り、共感し、行動へと移すのです。この点は、医療の現場で学んだ「相手の立場に立つ」という姿勢と、本質的に同じだと感じています。
- 質問:── AI時代に必要となる力とは何でしょうか。
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文章を作成することや要約、情報の整理といった作業は、今後ますますAIが担っていくでしょう。だからといって、人が考えなくてよくなるわけではありません。むしろ、「何を問いとして立てるのか」「何を大切にしたいのか」という部分こそ、人間が考え続けなければならない領域だと思います。AIは答えを提示することはできますが、問いそのものの設定は、人の価値観や経験に深く結びついているのです。
AIは効率化のための強力なツールですが、使いこなすだけでは十分ではありません。人々のウェルビーイングに資する形で活用されてこそ、真の価値が生まれます。その視点に立つと、文化的背景によってウェルビーイングのあり方が異なること、すなわち伝統や文化、歴史の重要性にもあらためて気づかされます。
これからの社会は、さらに多様化していきます。価値観も背景も異なる人たちと協働し、何かを生み出す機会は一層増えていくでしょう。このような時代においては、「言わなくてもわかる」という前提は成り立ちません。だからこそ、対話が重要になります。一方的に伝えるのではなく、相手の考えを丁寧に聞き、すり合わせ、ときには自分自身の考えを見直しながら、対話していく。そのプロセスを経て初めて、言葉は単なる「情報」ではなく、「価値」へと変わっていくのだと思います。