第13回 今、あなたに贈りたい漢字コンテスト中学生部門 受賞作品
「絡」
わたし へ
わたし より
私は毎日葛藤の日々。何をするにも葛藤してばかり。でも、なんで葛藤っていうか知ってる?葛や藤が絡まって解けない様子に例えているんだって。葛や藤は日の光を求めて絡まって絡まって成長する。私も絡まりをくり返していつかは、この身一身に日を浴びたいね。
牛窪 真帆子 さん
東京都・15歳・東京学芸大学附属小金井中学校
「別」
脂肪ちゃん へ
僕 より
もう僕ら、付き合い始めてから結構になるよね。昔からずっと一緒だった。とっても感謝してるよ。君がいてくれたおかげで愛嬌のある顔にもなれた。でも、最近違うことに興味があるんだ。一度、楽に動いてみたい。速く走ってみたい。本当にごめん。別れよう。
藤井 海 さん
大阪府・14歳・豊中市立第五中学校
受賞者コメント
国語の授業で書くことになったこの漢字コンテストですが、内容からも分かるように自分の最近困っている事を書いた物だったので、受賞してとても驚いています。正直、脂肪ちゃん、と読まれるのは自分でも結構恥ずかしいのですが、受賞出来て良かったです。もしこの文章で少しでも笑ってもらえたら、自分も嬉しいです。
結局、今も束縛系彼女の脂肪ちゃんとは別れられておらず困っております。いつかは脂肪ちゃんとは別れて本当の彼女が欲しいですね。
審査員からのコメント
協会賞、おめでとうございます。
“僕”さんにとっては切実なことかもしれませんが、作品を読んで、失礼ながら爆笑してしまいました。と同時に、思わず「うまい」と叫んでいました。“僕”さんに付いてしまった「脂肪」を人に例えているところが大変おもしろく、ほほ笑ましいと感じました。
長い付き合いで愛嬌のある顔にしてくれたことには感謝しているけれど、楽に動き、速く走ってみたいから、「本当にごめん。別れよう。」と「脂肪ちゃん」に提案?またはお願い?しました。
果たして、別れることができているのか。別れはつらく、時間がかかっているかもしれませんね。“僕”さんにお会いすることを楽しみにしたいと思います。
山崎信夫
「纏」
ひいおじいちゃん へ
自分 より
少し前、ひいおじいちゃんが遺した着物が出ました。その中には50年以上前の新聞で丁寧に着物が包まれていました。あなたは小柄で、そのおかげで私とサイズがピッタリでした。私が着物を纏うと、家紋が大きく背中にあり、あなたがいる気がしました。
粟飯原 総真 さん
埼玉県・14歳・川口市立神根中学校
受賞者コメント
このコンテストに賞があるのも知らず、受賞の知らせを聞いたときは人違いされているのかと思いました。
ひいおじいちゃんは背が低く、それで兵役を逃れたほどでした。そのおかげで今、自分が生まれて生活ができていると考えたとき、着物がひいおじいちゃんと体験した記憶があたたかく私を纏ってくれている気がしました。この着物を纏う機会が2回目があるかはわからないけれど、絶対に守っていかないといけない思い出のかたまりだと思いました。
審査員からのコメント
50年以上前の着物を纏うこと、昨今ではあまりできない体験かも知れません。
きっとドキドキしながら袖を通したに違いありません。
しかも家紋入りの着物、素敵ですね。ひいおじいさんもきっと空の上で喜んでいらっしゃることでしょう。
私は「纏う」という言葉の響きに、品格や粋な雰囲気を感じます。
また、ひいおじいさんがいる気がした、というように
目に見えない気配を表すことにも沿う言葉だと思います。
「着る」だとちょっとしっくり来ないですよね。
「纏」という漢字を選んだ感性、とても素晴らしいです。
やすみりえ
「急」
知らないおばちゃん へ
部活帰りの私 より
部活が終わってヘトヘトで歩く私に急に近づいて来た知らないおばちゃん。「ほら、ダラダラ歩くな、もっとこう、元気良く!そう、若いんだから頑張るんだよ!そう、その調子!」なんて急に言わないでよ。頑張るしかないじゃん!おばちゃんありがとう!
竹田 直美 さん
東京都・13歳・大田区立貝塚中学校
受賞者コメント
この度は、審査員賞に選んでいただき、ありがとうございます。先生から作品が入賞したことを聞いたとき、あのおばちゃんに心から感謝しました。部活で嫌なことがあった日の帰り道、トボトボと歩く私に急に話しかけてきた、見ず知らずのおばちゃんです。突然話しかけてきたかと思えば、「ダラダラ歩くな、元気よく歩け、そうその調子」と、私が曲がり角を曲がるまで大きな声で励ましてくれたおばちゃんです。私の前に突然現れたかと思えば元気のない私に活を入れ、嵐のように過ぎ去っていったおばちゃんに贈りたい漢字は「急」です。選んでくださった審査員の方々、そしておばちゃんに感謝しています。
審査員からのコメント
知らないおばちゃんとの印象的な出会い、面白いエピソードです。
偶然道で出会った人から、こんな言葉をかけられたらびっくりしてしまいますが、
作者はそこから元気をもらったのですね。
このコンテストに寄せていただく作品の多くは、家族やお世話になった人、
身近な大切な誰かへ贈りたい漢字を選んでいらっしゃいます。
こんなふうに「知らないおばちゃん」が登場することは、なかなか珍しいのです。
よく考えてみると私たちの毎日は知らない人とすれ違ったり、たまたま電車で隣同士になったりの連続。
一期一会の妙味を「急」という一文字に乗せてうまく伝えてくれました。
やすみりえ
「負」
母 へ
娘 より
口うるさい母に反発し、毎日激しい口げんか。自他ともに認める私の反抗期。偶然見た母子手帳に「なにがあっても守る」と見慣れた母の字。私の胸でホイッスルが鳴り響き、反抗期は即刻終了。母の愛と覚悟に秒で完敗です。でも、敗北宣言はまだ保留中。
樋口 綾華 さん
埼玉県・14歳・東京学芸大学附属小金井中学校
受賞者コメント
このたびは審査員賞をいただき、誠にありがとうございます。
私が選んだ漢字は「負」です。反抗期の私は、母に負けまいとして言葉を尖らせ、日々を勝負のように過ごしていました。そんな私が、偶然手に取った母子手帳で「なにがあっても守る」という一文に出会い、その瞬間、勝ち負けは意味を失いました。
敗北宣言は保留にしていましたが、この賞をもって正式に宣言します。母は争うつもりはなく、ただ向き合っていただけだったと知り、改めて完敗です。「負」は今、私が守られてきた時間の重さを受け止めるための漢字になりました。
審査員からのコメント
「負」という漢字は、人が貝(財産・貨幣)を背負っている様子を表した会意文字だそうです。
大切なものを背負っている姿なのですね。
お母さんは、母子手帳に「なにがあっても守る」と
娘の人生を背負う覚悟を記されました。とっても心に響くエピソードです。そう、作者は胸にホイッスルが鳴るくらいだったのですから。
負けたくない気持ちに揺れ動く娘の等身大の思い、お母さんにはもう届いていることでしょう。
やすみりえ
- 三上 莉乃 さん(兵庫県・13歳)
- 片瀬 勇人 さん(静岡県・13歳・静岡市立蒲原中学校)
- 水流 拓弥 さん(新潟県・12歳・新潟市立白新中学校)
- 須﨑 莉子 さん(大阪府・15歳・大阪市立住吉中学校)
- 森山 佳澄 さん(千葉県・14歳・市川市立大洲中学校)
- 馬場 香帆 さん(京都府・14歳・京田辺市立大住中学校)
- 榊田 有沙 さん(神奈川県・15歳・横浜市立大道中学校)
- 前田 くるみ さん(兵庫県・13歳・川西市立東谷中学校)
- 折越 一野 さん(岐阜県・13歳・高山市立日枝中学校)
- 志賀 俊太 さん(兵庫県・14歳・神戸龍谷中学校)
※ 受賞者の都道府県、団体名、年齢、職業は応募当時のものです。
※ 基本的には応募作品の原文をそのまま掲載しておりますが、一部修正を加えている箇所がございます。ご了承ください。
受賞者コメント
この度はこのような素晴らしい賞に私の作品を選んでくださりありがとうございます。
私はこの「絡」という漢字が一番葛藤の記録をしるしていると思いこの漢字を選びました。
「絡」にはからまるという意味だけでなく、むすび、つなげるという意味もあります。私はたくさんのかけがえのない瞬間をむすんで生きています。友人たちとの時間や楽しかったとき、悲しかったとき。
それら全てに心が揺れて、私にまといつく蔓となり光に向かっていられるのだと思います。そのことに改めて気づき、このような機会をいただけた事と、私のまわりにいつもいてくれる友人たちや家族、先生方への感謝の思いが溢れます。
審査員からのコメント
今の気持ちを、飾ることなく素直に表現されました。
客観的に自分自身を見つめることはなかなか難しいものですが、
作者はしっかりと受け止めることができる人なのでしょう。
「絡」という漢字の成り立ちには「糸でつなぐ」という意味が含まれているそうですが、
未来の自分へつないだこのメッセージは、葛藤の日々を支えてくれるお守りになるように感じました。
「この身一身に日を浴びたいね。」と結んだ言葉からは、もうすでに明るい陽ざしを感じます。
十代のかけがえのない時間を、たくさん悩みながらも力強く前向きに歩んでいって下さい。
やすみりえ