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私の好きな漢字と漢検 vol.6(後編)一番の勉強法は必要な時に必要な情報を取り出すこと 池谷裕二さん

 前回、実はしっかりと繋がっている脳と心と身体の関係について興味深いお話を語っていただいた池谷裕二先生。今回は言葉と記憶について、また、近年解明された「テスト効果」の最善かつ最強の勉強法についてお話を伺いました。そこにもやっぱり脳の不思議が眠っており…。

池谷裕二(いけがや ゆうじ)さん 1970年生まれ、静岡県藤枝市出身の脳研究者。1998年に東京大学大学院薬学系研究科にて、薬学博士号を取得。2002年からはコロンビア大学の客員研究員として留学する。脳科学の知見を一般にも広く伝えるため、『海馬 — 脳は疲れない』『自分では気づかない ココロの盲点 完全版』『脳はこんなに悩ましい』など、多くの著書も執筆している。現在は、東京大学薬学部教授。

心の状態を表す比喩表現

 日本語には心の状態を表すさまざまな比喩表現がありますね。例えば、愛する人にフラれてしまった時のような“胸が痛い”という心の状態を研究した人がいました。そうすると、針やナイフで刺されたような痛みを脳も感じていることが分かったのです。脳の中にある“痛い回路”が使われて、“胸の痛み”を再現しているのです。“苦い思い出”や“甘い記憶”なども同じです。苦い思いをした時や甘いと感じる時は、脳内にある苦味の領域や甘みの領域が活動する。また、ゴキブリを見た時や社会におけるマナー違反を見た時に感じる“嫌悪感”も同じく苦味の神経が活動していることが分かっています。そうやっていろんな身体感覚が使われて、私たちの心はできているのです。
 誰もが経験する“胸が痛い”、“甘い記憶”といった心の状態。それらは脳が生み出して心で感じているのですね。そういった心の状態を表す素敵な比喩表現が、日本語だけじゃなく、ほぼすべての言語に共通してあることもおもしろいですよね。

アウトプットが大きな意味を持つ勉強法

 私は学生時代、参考書を読むよりも問題集を解く方が好きな子どもでした。その当時は解明されてなかったのですが、テストを解くことが最強の勉強法だという「テスト効果」が、ここ10年ぐらいで分かってきました。参考書を読むことは知識を頭にインプットすること、一方、テストを解くことは脳に入っている知識を取り出す行為=アウトプット。インプットとアウトプットだと、勉強には圧倒的にアウトプットが大きな意味を持つ。読んで覚えることは受動的、解くために取り出すことは能動的で積極的な行為であり、アウトプットの方が、脳に負荷がかかるからです。
 勉強は詰め込みのイメージがありますが、実はそれを取り出さないと覚えられない。いかに必要な時に必要な情報を取り出せるかというのが一番の勉強法で、詰め込みよりも3倍ぐらい効果があると言われています。脳には毎日たくさんの情報が入ってきますが、そのすべては覚えられない。では情報を取捨選択するその基準はなにか。それは、“使う機会が多いので覚えておこう”という点です。だから、情報をアウトプットしていくことが大切なのです。
 また、一夜漬けやテスト直前に参考書を読み直すことも、記憶を定着させるためにはなりません。一気に覚えると一気に忘れます。苦労したものが長く残る、“学習における好ましい困難”という言葉があります。一般的に効果的と言われている勉強法ほど実は効果がないことが多いのです、楽に覚えることだから。その点では自分に合った勉強法よりも、自分に合ってない非効率な勉強法による知識ほど長く記憶に残るのです。でもこれは勉強だけじゃなく、スポーツや習い事も一緒ですよね。結局は、地道に努力をしないとダメなのです。

脳は漢字を“物”と判断している?

漢字を読む時と平仮名を読む時、実は脳の使う部分が違うのです。平仮名の情報を読み解く時、情報は脳の上を通り、漢字は横を通っていく。大きく分けて、音韻や空間的なイメージを読み取るのが上の部分で、物体的なイメージを読み取るのが横の部分。ということは、脳は漢字を“物”と判断しているということになります。人の顔や車、植物など微妙な差異を見分ける部分で漢字を読み解いているのです。

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