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小学校

「言葉の力」を高める/小学校/大阪

学校長 迫田 敏暉 先生

近畿 / 大阪

[私立] 大阪聖母学院小学校

学校長 迫田 敏暉 先生

1.感謝し、感謝される人を育てたい

 「人を愛し、自らを高める強い意志と豊かな心を持つ子どもを育成する」これが本校の教育方針です。カトリックの価値観を基盤に、高い学力の保障と宗教教育を核とした心の教育の充実に努めています。創立以来「従順」と「純潔」を校訓とし、隣人とともに喜びも苦しみも分かち合い、清くやさしく誰をも愛することができる円満な人格を形成することを目標としています。
 また、本校では入学式のとき、保護者のみなさまにしっかりとした筆箱を子どもたちに持たせていただくようお願いしています。それは聖母の伝統として、ものを大切に使う習慣を身につけさせるためです。卒業式の前日には、六年生と保護者、全教職員が参加して感謝の祈りを捧げ、六年間同じ筆箱を使い切った子どもたちを大きな拍手で讃えます。
 「ものを大切に使い続ける」それは84年間の歴史を通じて培ってきた本校の「誇りのしるし」です。これからもずっと守り続けていきたい聖母教育のこだわりです。

 一方、小学生に「わが身のごとく人を愛せよ」と言っても難しいので、「友達を大切にしよう」「小さなこと・どんなことにも喜びを見つけよう、感謝しよう」と指導しています。そして、自分が感じた「ありがたい」とか「嬉しい」ということを他の人にも思ってもらうために、今度は自分が感謝されることをしようと指導しています。
 また、「幸せ見つけ」として、気がついたことや嬉しかったことを子どもたちがノートに書き、担任がそれを学級通信にまとめ、保護者の方々に伝えています。例えば、「友達が遊ぼうと声をかけてくれたことが嬉しかった。」「お弁当がおいしかった、嬉しかった。」などです。お弁当がおいしいと感じることは誰にでもあることですが、おいしいと思ってそれきりになるのではなく、「そのお弁当は誰が作ってくれたのか?」などを考ることで、おうちの人に対して感謝の気持ちを持つようになります。友達・親・先生、いろんな人の愛があります。身の回りにある幸せを見過ごさず、幸せだと感じることが大切です。そして感謝することがあれば、今度はその感謝を人からしてもらえるようになりましょうと指導しています。
 キリスト教の黄金律「人にしてもらいたいことを人にもする」これが全ての根本です。善をもって悪に報いるなど、いろいろな場面を通じて聖書に書かれているキリストの教えや行いを子ども達の日常生活におろしていくことで、人を大事にし、友達のことを尊重することへとつながっていきます。

2.学校だからこそ築ける人間関係

 学校が家庭でも塾でもない一番大きな違いは、友達がいることです。友達同士、より好ましい友人関係を築いて学校生活を過ごすことが重要です。最近は、時間的、精神的に余裕のない子どもが多く、そのストレスや欲求不満をマイナスの方向で発散する子どもが多いように感じます。学校は欲求不満の発散の場でなく、解消の場でなくてはなりません。欲求不満を解消するためには、友達との相互の係わり合いの中で楽しい時間を過ごさせることが大切です。お互いを思いやり、気遣い、温かく和やかな関係を築いていくことを重点としています。
 そのため本校では、校内のさまざまな機会を通じて学年の縦割活動に取り組んでいます。例えば、本校は電車通学の子どもも多く、幼稚園・保育園を卒園したばかりの新一年生が一人で学校へ行くことに不安を感じる保護者の方もいます。ですから、同じ駅を利用する六年生が、学校まで一緒に登校します。それを四月から五月の連休前まで約一ヶ月ほど続けます。六年生は丁寧に責任をもって面倒を見てくれています。例えば「駅まで来たけど、おなかが痛いと言い出したので、駅員さんに頼んで家に電話をしてもらいました。そのため学校に遅れます。」と電話が入ったりもします。一年生はお世話になった六年生が卒業する時期にはとても寂しがりますし、とてもいい関係が築けていると思います。

3.判断力・理解力・表現力を培う「言葉の力」

 読む・書く・聞く・話すというのは思考力を伸ばす基礎となるものです。学力といえば、記憶したこと、漢字が書けるなど数量化して測定できるものだとする考えもありましたが、本当の学力というのは、判断力・理解力・表現力です。じっくり考えて理解し、判断し、それを人にわかってもらえるように表現する。このような、自分でまとめる力が必要なのです。そのためにはやはり言葉の力が大切です。その言葉の力のひとつとして、漢字を読み書きできるということが大事だと思っています。
 本校では、漢字学習で「読み先習(※)」に取り組み、四年生の一学期までに六年生までに習う漢字を全て読めるように前倒しで学習させています。そうすることで、読むこと自体に対する抵抗がなくなり、図書室での読書の世界が広がります。そして読むだけではなく、それを通して書くことも覚えていきます。特に漢字は使って身についていくものなので、機械的に覚えて書けましたというものではありません。同じ漢字でも一字ごとに意味が違います。例えば「あたたかい」と言っても、「温」と「暖」では意味あいが違います。そういった違いも理解しながら読めるようにしようと思うと、適切な漢字を使って書ける力が必要なのです。ですから子どもには、漢字を頑張って覚えましょうと伝えています。そのなかで、はっきりとした目安、目標を持たせるために導入したのが「漢検」でした。
 子どもたちは、それぞれが自分の目標を持って取り組みます。先日も二人ほど個人的に受検し、合格証書を持って来た子がいました。三年生で八級に合格したそうです。そのことを、全校朝礼のときにすべての子どもの前で伝達をしました。それだけでも子どもは喜んでいます。こういった喜びが、学習に取り組む動機付けになるのです。

 日常生活の中で思考力や判断力は必要不可欠です。物事を筋道を立てて考えるためには論理的な思考が必要になりますし、相手の立場に立って考えることも必要です。このように物を考えるにあたって、考える手段や媒介としての言葉の大切さを教えるようにしています。

 また、判断力や考える力を伸ばすためには、「物事を考えなさい」「判断しなさい」と言うだけでなく、判断する材料をやはり常に何らかの形で与えてあげなければなりません。「こういうことがありますよ」「こういうことをしたら危ないですよ」と、具体例やたとえを示すのです。私は子どもによく、「向こう見ず」の話をします。例えば全校朝礼で次のような話をしました。

 「ある先生が二人の弟子にこれ以上教えることはないというくらい教えました。そして、これさえできれば合格だと言って、最後の問題を出しました。『この垣根が飛び越えられるか?飛び越えられたら合格だ』と。一人はいきなりえいっと飛び越えました。飛び越えられる高さだったからです。しかし、もう一人はすぐには飛び越えずに、持っていたものを向こうに投げて、それから飛び越えました。先生はどっちを合格にしましたか?」

 子どもたちに聞くと、たいていは「すぐに飛び越えた方!」と言いますが、実は、物を投げてから飛んだ方なんです。というのも、すぐに飛び越えたら、そこに誰がいるかわからない。敵がいてやられるかもしれない。けれど物を向こうに投げて何もないことを確かめてから飛び越えたら、それは安全ですよね。だから先生は、後から飛んだ人を合格にしたのです。何かをするとき、先のことを考えずに行動してはいけない。先を見通して自らの行動を律するということが大事だ、という話のたとえとしてこのような話をしました。このように、子どもが考えるきっかけになるような印象に残る話をするのも、私たち教師の役割だと思います。

※まず「読める」ようにする学習方法。学年別漢字配当表の枠を超えて取り組むことが多い。

4.最後に

 漢字に限らず、言葉については、ひとつひとつのニュアンスを感じられるような、敏感な言語感覚を磨くことが重要だと思います。それが細かな感情を育てることになり、細かな感情表現する上では言葉の力がまた必要となるといった相乗効果が生まれます。それが語彙力の向上にもつながっていくと考えています。


※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。

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