団体受検 取組事例(小・中・高 等)
小学校
学習意欲と学力向上のため全児童が漢検を受検/小学校/東京
関東 / 東京
[公立] 渋谷区立臨川小学校
並木 弘美 先生
全員受検で保護者との一体感が醸成
本校は各学年1クラスの少人数で構成されている学校です。全児童が一致団結し、まとまりがある素晴らしい学校ですが、ともすれば「井の中の蛙」になってしまいかねません。そこで社会という大海を知り、社会の中で勝負してもらうためにとの思いから、平成17年度から年1回、児童全員が一斉に漢検を受検するという取り組みを始めました。
漢字は基礎学力を培う土台となるため、漢検に向けた取り組みを通して漢字に興味を持ってもらうことも狙いのひとつです。さらに、検定試験という明確な目標を設定することで、子どもたちの挑戦意欲を刺激し、学習意欲を育みます。目標に向かって努力した結果、社会で認められる一生残る資格を取得できることも、子どもたちの自信につながっています。
学校を挙げて全員が受検するのですから、保護者の理解は欠かせません。年間行事に漢検を組み込み、4月の保護者会でその主旨を説明します。また、試験の1~2ヶ月前には受検案内を全家庭に配布し、情報がきちんと伝わるよう徹底しています。
目標級として、学年毎に学年修了レベルの級を目安として設定しています。ですが、実際に受検する級は、年度初めに各家庭で児童と保護者が話し合い、各自で決定しています。
保護者からは、目標級が明確なため家庭学習にも取り組みやすいなど好意的な意見をいただくことが多いです。「子どもと一緒に漢検合格を目指して頑張っています」という反応もあり、最近は児童と一緒に受検する保護者の姿も見られるようになりました。漢検に向けた取り組みは、家庭学習を誘うだけでなく、親子の会話の機会を増やし、絆を深めるきっかけにもなっています。
学習の質も向上
年度内にその学年修了レベルの級に合格するためには、教科書の進度より早く学習を進める必要があります。普段の授業でも、漢字は教科書とは別に、体系立てて先取り学習しています。
対策の中心は15分の朝学習と家庭学習です。朝学習では、目標とする受検級ごとに教室に集まり、各家庭で用意していただいた協会発行の教材「漢字学習ステップ」を用いて漢字学習に取り組みます。各教室には教員が控え、丸付けや質問に答えますが、基本的に自学自習を行います。同じ級を目標とする児童同士が同じ空間で学習するため、お互いの学習進捗に刺激され、集中して取り組んでいます。また夏休みなどの長期休暇には、これまでの復習や追いつけなかった範囲を進めるよう宿題を出し、家庭でも学習に励んでいます。
漢字の指導に際しては、普段接している子どもたちの書き癖などは見慣れてしまい、多少のトメやハネ、字の丁寧さなどは指導が甘くなりがちです。しかし、漢検に合格するという共通の目標を持ってからというもの、教員の側も試験を意識するようになり、普段の授業から「誰が見ても分かる字を書く」よう意識付けるようになりました。
また、1年生にとっては漢検が人生初の公の試験となります。初めてのためいきなり本番では戸惑ってしまい、次から次へと質問が出て試験に集中することができません。そのため試験前には過去問題を活用して模擬試験を行い、試験を受ける練習も行います。また試験当日は、適度な緊張感をもたせるため、慣れ親しんだ担任の先生以外が監督するように工夫しています。
得意不得意のバラつきなく漢字の力が定着
試験後は、担任の先生から児童一人ひとりに検定結果を手渡します。その際に、今後の学習方法や次回の目標級などのアドバイスも行います。例えば、残念ながら合格まであと数問だった児童には、次回は次の上位級を目指すよう誘います。また合格まで開きがある児童には、モチベーションを高め、再度同じ級に挑戦するようアドバイスします。中には、次の学校での受検までに、個人で受けるなど再挑戦し、不合格した級に受かっている子もいます。
平成22年度の6年生は漢検導入当時1年生で、6年間継続して漢検を受検してきた子どもたちです。6年継続した結果、児童全員が得意不得意の差がなく、漢字の力がしっかり定着していると感じます。児童にとっても「漢検の級を取れるので、この学校でよかった」と本校の生徒であることに誇りを持っているようです。
学校紹介
校長:德満 哲夫 児童数:157名
本校は、校歌に「東京に歴史を誇る」とうたわれているように、開校133年を数える下渋谷地区で最も歴史のある学校です。開校以来、親子3代、4代と本校に通学している児童もおり、地域の人々の心のふるさとともなっています。「りんせん」とは、本校に隣接する臨済宗の古刹祥雲寺とのかかわりから名付けられたとも、渋谷川を臨む立地から名付けられたともいわれています。
<教育目標>
やさしく つよく かしこく
人間尊重の精神のもと、心身共に健やかで広く世界に目を向けた個性豊かな意欲あふれる児童の育成を目指しています。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。