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中学校

社会に貢献する素養を育む言葉の力/中学校/神奈川

入試広報部 犬塚 大蔵 先生

関東 / 神奈川

[私立] 公文国際学園中等部・高等部

入試広報部 犬塚 大蔵 先生

1.輩出したい人物像

 本校の生徒には、「思考力、判断力、想像力に富み、国際社会で活躍できる行動力のある人物」になってもらいたいと考えています。このような素養を身につけさせることが、将来、生徒たちの自己実現を助けることになると信じています。

 生徒の自己実現のために限りない支援をすることが学校の役割です。自己実現とは他者との関係性の中でのみ成り立ちます。異質の他者と交じり合い、その中で自分の意見を表し、協調し、社会に有用な新しいものを創造する。このような過程なくして自己実現はありえないのです。自己実現と社会貢献は、およそ同義であると考えられます。

 生徒の自己実現に必要な学力を総じて、「基礎学力」というのだと思います。「基礎学力」を身につけているということは、社会に貢献する素養を身につけているとも換言できるでしょう。そして、その基礎となるのが「母国語の力」です。そのため、社会に貢献する素養を育む土台づくりは、言葉の習得の仕方、使い方を生徒に意識させることから始まると考えています。人は1・2歳の頃に急速に言葉を習得します。ここで習得される言葉は生きるのに必要な本能的な言葉です。これらの言葉は必要性が高いのでそれ程努力をしなくても、自然と習得できます。しかし、人が人らしくより深く生きるために必要な言葉、社会性の獲得に必要な言葉の習得には訓練が必要です。社会に出る前の高校生のうちにそれらを身につけさせることは、とても大切なことだと考えています。国語科では、生徒たちに、より深く生きるために必要な言葉をどう習得させるかを意識して、日々指導を行っています。

2.生徒の「言葉の力」に関する問題意識

(問題①)環境変化による読書離れ
 20年、30年前の中学生、高校生は、より深く生きるために必要な言葉を、良書を通じて自然と体得することができました。しかし、最近の生徒たちは、携帯電話やパソコン等のITツールの普及をはじめとした環境の変化により、なかなか良書を読むところまで辿り着かないのが現実です。彼らの生活の中には、TVやインターネットなど受け身の状態で楽しめるツールが沢山あります。そのため、読書をする時間が奪われてしまっています。

 また、読書経験を小さな頃から積み重ねていない生徒たちは、漫画や携帯小説を読んだだけで、読書をした気になってしまうこともあるようです。より深く生きるために必要な新たな概念や、より詳細に自分の考えを表現するのに必要な新たな語彙を獲得するには、携帯小説のようなライトなもの、読みやすいものだけでなく、深遠なテーマを題材にした考える読書をすることが必要です。しかし、上記の理由などから、そのような書籍を手にするまでのハードルが年々少しずつ高くなっていると感じています。

 生徒を良書に導くには、まずは言葉に対して興味を持たせることが大事です。それがやがて、読書をする力になるのです。読ませるために生徒に気づきを与える仕掛けをつくる(朝読書を行う、推薦図書を明示するなど)と同時に、根本的に言葉に対する興味を喚起する仕掛けが必要と感じています。

(問題②)言葉に対する意識の低下
 また、生徒たちの漢字の間違い方が以前よりも稚拙になってきているようにも感じています。言葉に対する意識の低下と言ってもいいのかもしれません。

 漢字の意味を理解せずに何となく曖昧に『形(記号)』として漢字を覚えてしまっているせいか、とんでもない間違え方をする生徒が増えてきました。例えば『催促』という語彙を『催足』と書いている答案を目にすることがあります。『催』も『促』もどちらも「うながす」という意味ですから、語彙の意味とその語彙を構成する漢字の意味を理解しながら覚えていれば、このように間違えるはずはありません。しかし、現実として、以前はそれ程目立たなかったこのような間違いが散見されるようになってきているのです。反復訓練をする機会の減少で、生徒たちの学習が理解して蓄積するのではなく、その場しのぎの暗記になってしまっていることが原因の一つではないかと考えています。

 漢字だけでなく、文章についても同じことが言えます。主語がない文章や、どちらの意味にも取れるあいまいな文章が目につくようになってきました。「書き手である自分の意図を読み手が汲んで読んでくれるだろう」という生徒の甘えがここ数年強くなってきているのかもしれません。

3.本校における「漢検」の位置付け

 本校において、「漢検」は言葉に対する興味を喚起する仕掛けの一つとして機能しています。より深く生きるために必要な言葉の習得には、良書との出会いが重要であることは今も昔も同じです。全ての生徒が自発的に良書に手が伸びるようにするためには、難しいテーマの書籍でも読みこなせるだけの語彙・漢字力を身につけさせなければなりません。「漢検」は読書に必要な最低限身につけるべき語彙力を体得するきっかけの一つにもなっていて、生徒たちが自発的に読書をすることの助けにもなっています。

 本校では、今から約10年前に「漢検」を本格的に導入しました。当時は、校内で行う漢字テストが漢字学習の動機としてあまり機能していないと感じ、外部の試験ならば生徒たちは緊張感をもって臨むだろうとの思惑から「漢検」を導入しました。今では、「漢検」に挑戦することは学内のイベントとしてすっかり定着しています。学年別に目標級を設け(目標級:中1=4級、中2=3級、中3=準2級、高1=2級)、毎年1回、全員で挑戦します。取り組みの内容は、学校案内や学校説明会などを通して入学前から生徒、保護者に伝え、中等部では、定期的に「漢検」に準拠した小テストを実施することで学習のフォローと状況把握を行っています。生徒たちは私たちが想像していたよりも「漢検」合格にこだわり、学習に励んでいます。学校以外の全国的な機関に評価されることが大きく影響しているようです。合格すれば漢字活用能力を有している証明として社会的な流通性の高い資格を取得できることになるのでそのことも伝え、さらに学習動機を持続させたいと思います。

 学校では、標準進度として上記のような学年別に目標級を明示しガイドラインを示していますが、実際には多くの生徒たちが自らさらに高い目標を設定しています。そして、自分で設定したより高い目標をクリアできるように自学自習に励んでいます。副次的な効果として、「漢検」は自学自習力を身につけさせることにも役立っています。

4.学校の役割

 学校とは、今、生徒が必要性を感じていることだけでなく、将来、生徒の役に立つことを教えてあげる場所です。生徒たちは、今自分で考えて必要だと思うことは自発的に学習し、身につけます。生徒たち自らが欲し、かつ、口に合うものはこちらが機会を与えなくても自ら口にするものです。ですから、彼らの口に合うものだけでなく、将来必要になることで、彼らが逃げがちな面倒くさいもの、口に合わないものをしっかりと体得できるように仕掛けを作り、導いてあげることが大事だと考えています。

 日本人にとって漢字は教養であり、文化です。「漢検」に挑戦することで培われる漢字活用能力は、まさに、生徒が長い人生を有意義に送る上で必須のものと言えます。そして、地道な訓練でしか身につけることができないので、人によっては面倒くさいと感じる領域でもあるでしょう。だからこそ、学校でしっかり機会を設け、全員で取り組み、最低限必要なレベルである「漢検」2級までは全員に到達してもらいたいと考えているのです。中学校、高校では将来必要になること、時間をかけなければ身につかないことをじっくり行える時間があります。それを外圧的にやらせるのではなく、仕掛けを作り、生徒たちが楽しみながら自発的に学習するような環境をつくる。これも学校が生徒に対して行うべきことの一つだと考えています。


※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。

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