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中学校

与えられた役割をまっとうできる人を育てる

理事長・校長 堀内 不二夫 先生

関東 / 東京

[私立] 巣鴨中学校・高等学校

理事長・校長 堀内 不二夫 先生

1.社会人としての責任と義務

 本校の建学の精神の一部に、「適(ゆ)く所として其の天職を完(まっと)うせんとす」というくだりがあります。「それぞれの場で、手を抜かずに誠心誠意、真面目にきちっと自らの本分を果たして欲しい」ということです。
 将来どういう方面に進むか、何をするか、それは生徒次第。しかし、自分が将来どの方面に進むかは、中高生である今の段階ではわからないでしょう。例えば「医者になりたい」など、夢として将来の希望を描いていても、実際にその職業につくかどうかは分りません。それでも、社会に出ればそれぞれが活躍(貢献)の場を与えられることになります。それは経営者かもしれないし、一社員かもしれない。その与えられた場で、手を抜かずに真面目に自らの果たすべき務めをまっとうして欲しいと思います。
 また、「目先の利(実利)」ではなく「社会の大きな利」を考えられるようになって欲しい、と考えます。昨今、目先の利にとらわれ、社会の利やもともとの意味を考えずに判断したことによって生じた社会的弊害が散見されるようになってきました。例えば、近年改訂された「祝日法」も目先の利を優先させて弊害が起こった事例の一つといえます。幾つかの祝日を変動制にし3連休を増やすことで、国民の消費を拡大するという目先の利を求めましたが、実際には3連休になったからといって消費は増えませんでした。しかも、この改正によって、本来、その祝日が持っていた意味が失われるという大きな社会的弊害がでてしまいました。
 例えば、成人の日。1月15日を成人の日としたのは、この日が小正月であり、かつて元服の儀が小正月に行われていたことによると言われています。侍は15才で元服する、この15という数字に意味があったのです。現在の法律では、成人の日は1月の第二月曜日。つまり1月8日~14日ということになり、15日になることはなくなりました。成人の日と侍の元服の関連性が断絶されてしまいました。ここ数年、成人式が単なるお祭り騒ぎ(乱痴気騒ぎ)になってしまっている原因の一端かもしれません。目先の利ではなく、社会にとって何が大事なのかをあらためて考えてみて欲しいと思います。

2.人生において最も大事なものを最も大切な時に

 リーダーは育てようと思って育てられるものではなく、与えられた場で本分をまっとうしていれば自ずから人様が押し上げてくださる、そういうものだと私は考えています。また、本質的には、全ての人がそれぞれの領域でリーダシップを発揮するべきであると考えており、全ての人がリーダーであるとも言い換えられるでしょう。
 リーダーシップを発揮しようとするならば、少なくとも、「謙虚な姿勢」が備わってなくてはなりません。その領域で的確な判断をするには、他人からのアドバイスを謙虚な姿勢で傾聴できるかが重要だからです。
 傾聴力の有無は、自己否定できる勇気、謙虚さ(「無知の知」=自ら至らないところがあることを自己認識していること)、礼儀作法が備わっているかどうかです。特に、礼儀作法を身につけていなければ社会に出たときに他者の協力を得ることはできませんし、他者から教えていただけなくなります。礼儀作法は基礎素養として非常に大事なものです。
 このような人生において最も大切な事は、最も多感で吸収力の高い中学から高校の時期に教えることが重要です。中高時代に身につけるべき最も大事なことは、長い人生において大切な基礎学力と道徳規範であることは言うまでもありません。したがって、本校では「基礎学力と道徳規範を身につけさせること」を目標とし、教育に取り組んできました。中高時代に身につけたこの見えない財産こそ一生を左右する最も大切なものなのです。

3.基礎学力は「読み・書き」、「歴史」、「古典・漢文」。その土台となる漢字力

 基礎学力とは、基礎的な「読み・書き」と「歴史」や「古典・漢文」であると考えます。「歴史」や「古典・漢文」は知恵の宝庫です。私自身も何かの意思決定をしなければならない時、考えを巡らす時には、「歴史」や「古典・漢文」を通して学んだことをヒントにしています。「歴史」で学んだことを参考にして同じような判断をしたのか、あえて違う意思決定をしたのかは、後から明確に判定できるものでもありません。しかし、人類の知恵の積み重ねである「歴史」や、「古典・漢文」を学んでいるからこそ、過去の事例からある程度の帰結を想定し、その上で自信を持って意思決定ができるのだと思います。
 大人になれば判断の連続です。だからこそ中高生のときに「基礎学力」として「歴史」、「古典・漢文」はしっかり学んでおかなければならないのです。しかし、残念なことに近年では、特に「漢文」は大学入試でそれほど配点が高くないという理由からあまり重要視していない学校もあると聞きます。また、「今、教えても生徒が理解できない。」という理由で教えないということもあるようです。学校の役割を考えれば本末転倒と言わざるをえません。生徒が今理解できようが、理解できまいが、大事なことは中高時代にしっかり教える。中高時代に生徒の内に叩き込んだものは、醗酵し、いずれ彼らの人生の大いなる助けとなります。生徒の人生にとって本当に大事なことこそが基礎学力なのです。

 そして、基礎学力の土台となるのが漢字能力です。表意文字である漢字があるからこそ、「歴史」や「古典・漢文」も醗酵されるのです。「教養」とはすなわち「漢字」であり、「漢字の軽視」は「教養の軽視」であると考えています。例えば、幕末の儒学者である佐藤一斉は、「侍は己の内なるものに恃(たの)むべし」という言葉を残しています。現在は、「頼む」と表現されることもあるようですが、本来は「恃む」と書くべきなのです。「恃む」は「心のよりどころとする」ということであり、「頼む」は「頼りになるものとしてあてにする」ということです。表意文字である漢字は読み方が同じでも、その一文字一文字にそれぞれ違った意味が込められています。佐藤一斉の残した言葉は、「恃む」と表記しないと本当の意味は伝わらないのです。

 また、漢字は思考の縁(よすが)。つまり思考力に不可欠な核といえます。漢字能力と各教科の学力に相関があるのは当たり前で、それは、思考力と相関しているからです。昨今の若年層の思考力が低下しているとすれば、それは漢字能力が低下しているということでしょう。そもそも全ての国民が活用できるようにと字数を絞った常用漢字の活用でさえ覚束ない人もいると耳にしますが、とんでもないことだと思います。最低限の思考の縁を失えば考えることはできないのは当然です。
 このような信念のもと、本校では常用漢字を使いこなせるレベルである「漢検」2級は中学3年生までに到達するように指導しています。「漢検」2級レベルの漢字力は身につけて当たり前の力であり、全ての生徒が早期に身につけるべきものと考えています。

4.道徳規範は講義ではなく実践で身につける

 道徳や規範は生活の中で行動を通じて学ぶものであり、講義を聴いて頭で理解するものではありません。本校では6年間の学校生活における実践を通じて自然に身につけていきます。「約束は守る」「卑怯なことはしない」など本当に大事なことは理屈として覚えるのではなく、経験を通じて体得するものなのです。
 生徒の自律性を育むには、「~してはならない」という北風方式の指導だけではだめです。生徒達が感じている彼らなりの正義感やプライド(矜恃)に訴えかけることが肝要なのです。本校には、「巣園(そうえん)健児」という言葉があり、生徒は、「先輩、同僚、後輩の顔に泥を塗るわけにいかない」という思いがあります。このような矜恃(自分達の能力や意地を価値あるものとして誇る気持ち)に訴えることが重要なのです。全校生徒(約1500名)が参加する朝礼では、毎回、開始のベルが鳴る前に全員が校庭に整列し、話を聞く準備が整っています。教師が尻を叩いて整列させている訳ではありません。生徒が自主的に行動し、それが習慣化しているのです。彼らの矜恃に訴えかけた指導の成果の一つだと思います。
 本校には、「大菩薩峠越え強歩大会」や「巣園流水泳学校(海洋学校)」、「柔・剣道早朝寒稽古」など伝統的な学校行事があります。一面では生徒たちにとって厳しい行事かもしれませんが、いずれも道徳規範を体得する良い機会になっています。

 学校説明会などでも、基礎学力や道徳規範を身につけることが重要であるということを中心にお話しさせていただいています。理系や文系に偏った知識では世の中に貢献することはできません。
 例えば大学受験だけを考えれば、受験で重要な数学や物理の授業を優先的に行ったほうが効率的かもしれませんが、本校では「漢文」の授業を毎週一時間とっています。文系の生徒でも物理・化学を履修し、理系の生徒でも古典・漢文を履修します。
 このように「大事なものはしっかり教える」その姿勢を貫いてきました。子どもたち自身が社会を築いて各自の役割をまっとうできる力を修得する場として、これからも、その信念を貫き続けていきます。


※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。


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