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中学校

社会で活躍する人材を輩出する/中学校/東京

学校長 平野 英雄 先生

関東 / 東京

[私立] 共立女子中学校・高等学校

学校長 平野 英雄 先生

1.基礎学力とは「高い思考力」「幅広い教養」「礼儀作法」「言語技術」

 本校は、明治19年、日本で女子教育がまだ始まったばかりの時代に「女性の自立」を建学の精神として設立した学校です。「自立」とは、もちろん「自分の力で物事を行うこと」ですが、ここでは、自分自身で立てた規範に従って行動するという意味の「自律」も含んでいます。この建学の精神の下、創設以来約120年、『社会で活躍する』女性輩出の役割を担い続けてきました。「誠実・勤勉・友愛」の校訓は、ごく標準的な言葉ではありますが、「女性の自立」を目指す教育を行う中で生徒に伝えなければいけないことの全てを集約しています。そのため、学習面・生活面、あらゆる場面を通してこの校訓を基調とした教育を行っています。

 現代は、性別を問わず全ての若い世代に対して活躍の舞台への道が開かれています。しかし一方で、その舞台へ上がる条件は、過去よりも厳しく、そして高いものになっているのも現実です。実社会で活躍するためには、言われたことをただ行うのではなく、自ら課題を考え、その解決に向けて行動する力が求められます。本校が目指している卒業生の人間像は、まさにこの力(課題形成力)を有する人材です。それは、社会や組織のあるべき姿を想像し、現状とのギャップを認識し、そのギャップを埋めるべく意欲的に行動できる人材とも言えます。課題を形成するには、高い思考力が必要なのは言うまでもありませんが、それに加えて幅広い教養が必要です。教養がなければあるべき姿を想像することができないからです。

 さらに本校では、思考力、教養に加えて、女性ならではの礼儀と作法をその本質的な意味や背景も含めて指導しています。本校の「基礎学力」を定義するならば、「高い思考力」、「幅広い教養」、「礼儀作法」及びその土台となる「言語技術」がそれにあたると思います。「言語技術」は思考力の基盤であり、教養獲得の土台です。また、礼儀作法についても、意味や背景まで理解するには「言語技術」が不可欠なのです。「言語技術」を基盤とした「基礎学力」習得に向けて、中高6年間を通し徹底して指導を行ないます。表面的なテクニックだけを教えても、社会に出ればすぐにメッキが剥がれてしまうからです。本校の卒業生が社会から高い評価をいただいているのも、全ての生徒が「基礎学力」を習得していることに大きな理由があると考えています。

2.「基礎学力」習得の第一歩は、言語技術の獲得

 全ての知的活動は言語で行われます。言語を操る力が「万学の基礎」といわれるのもそのためでしょう。「言語技術」の向上は、思考力の基盤でもあり、また教養獲得の土台です。「基礎学力」習得の第一歩は、「言語技術」の獲得にあるといっても過言ではありません。本校では、「言語技術」の基盤となる語彙力、とりわけその核となる漢字力向上のため漢字指導を徹底して行っています。さらに、獲得した漢字力を文脈の中で活用できるレベルに昇華させるべく読書指導、作文指導も同様に一貫して体系的に行っています。

<2-1> 漢字力 = 想像力

 表意文字である漢字の学習は生徒の想像力を育みます。なぜならば漢字にはその成り立ちや部首に意味や背景があり、熟語にもその組み合わせに法則や物語があるからです。漢字を使いこなすことは、つまり点と点を繋ぎ合わせて『像』にすることであり、まさに「想像力」そのものと言えるでしょう。
 具体的には、単なる書き取りのみに終始せず、辞書を引かせ意味を調べさせるなどして表意文字である漢字の特徴を生徒に分りやすく伝えるようにしています。また、校内漢字テストを定期的に行うことに加えて、「漢検」を活用し到達目標を設定しています。高校生の早い段階で「漢検」2級レベル以上の漢字力を身につけることをシラバスに明記し、生徒と保護者に告知しています。

<2-2> 書く力 = 言語技術

 全ての知的活動の土台となる漢字を文脈の中で活用できる漢字力に昇華させ、言語技術として実際に使えるレベルにするために、読書指導、作文指導にも力を入れています。
 具体的には、「読書案内」という形で推薦図書を明示し、生徒全員が、最低月に1冊は読書をし、400字の感想文を「読書ノート」に記入し提出しています。もちろん、教員は添削の上、コメントも書いて次の提出日までに返却します。さらに、それとは別に夏期休暇には、学年ごとに3冊の推薦図書を指定し、そのうち1冊の感想文を原稿用紙三枚にまとめ提出させています。ちなみにこの感想文はコンクールを開催して優秀作を全生徒の前で表彰するといった学校行事にもなっています。また、文化祭や体育祭などの学校行事の後にも必ず作文を書かせるなど、非常に作文を書く機会が多いのも本校の特徴です。これら読書指導・作文指導が相乗効果を発揮し、生徒は高い言語技術を身につけています。

3.「基礎学力」習得には学ぶ機会を与える

 「基礎学力」を教えることは簡単ではありません。なぜならば、「基礎学力」を教えることは、「意味」や「構造」を教えることであり、入試受験対策のように表層的な「点としての知識」を伝授することとは本質的に異なるからです。
 また、入試受験対策では、学習する動機(目的)が生徒の目前にありますが、「基礎学力」の指導においては、目的が身近には見えにくいものです。さらに、「基礎学力」を習得するには、反復訓練や地道な努力が欠かせないので、指導者の力によるところが大きく、先生方は生徒の将来のために日々工夫を重ねています。

 例えば、本校の夏季講習は、入試受験対策ではありません。毎年、教養教育として、希望者向けに100分授業を前後期5日間ずつ行っています。指導にあたる先生方には、なるべく自分の研究テーマなどを題材に、入試受験対策ではない幅広い領域に関する教養教育の開講をお願いしています。本年度も「東京の地理」「浴衣の着方」「レディーのための法律学」「江戸の怪談を読む」といったユニークな講座が揃っています。また私自らも、「日本史東大型論述問題研究」という講座を開くことにしました。参加を希望する生徒には、「東大型とは、暗記ではなく与えられたテーマを歴史の流れのなかで論理的に構成することで、それには幅広い教養が必要だよ。」と伝えています。このように本校の夏季講習は、先生方がそれぞれの専門領域を通して生徒に教養の大切さを伝える機会となっているわけです。

 また、本校は、隔週で礼儀作法を学ぶ授業を設けています。大学を経て社会に出た多くの卒業生が「教えてもらっていて役に立った。」と振り返るのが、実はこの礼儀作法の授業です。この授業では、「形」だけでなくその背景や意味も教えるようにしています。礼儀作法という「形」は、人と人との関わりの中にある合理性、思いやり、配慮等が、長い年月を通して洗練され、結晶となって現代に残ったものです。礼儀作法を身につけた人は、上司はもちろん同僚、部下などの協力を得られやすく、また、周囲の人から様々な学びを得ることも出来ます。卒業生が先のような感想を抱くのも、実際に企業や官庁などに入ってから、「礼儀作法が身についているため仕事をしやすい。」と感じるからなのでしょう。本校で学んだ礼儀作法は、これから生徒達が社会生活を送る上での大きな財産の一つになるのだと思います。

4.最後に

 本校が、「言語技術」を基盤とした「思考力」や「教養」及び「礼儀作法」といった「基礎学力」を重視し、その指導に力を注いでいるのは、社会に出てからはこの「基礎学力」こそが求められているからです。就職活動では、学生時代に様々な場面で意味を問うてこなかった学生、構造的に物事を捉える訓練をしてこなかった学生は非常に苦労するそうです。入社試験等で試されるのは、持っている知識の量ではなく、考える力や考える道筋だからでしょう。点の状態にある知識や情報を繋ぎ合わせたり、紡いだりすることが出来るか、その思考プロセスを試されているのです。また「思考力」や「教養」がなければ、意味を問い深く思考することも、物事を構造的に捉えることもできません。逆に、確かな「言語技術」に基づいた「高い思考力」と「幅広い教養」があれば、社会に出てから常に求められる課題の形成も自然とできるようになると考えています。
 そして礼儀作法(つまり、社会人としてのマナー)を身につけている人は、社会に出てからも多くの人から多くのことを教えていただくことができます。生徒は、将来大学を卒業した後、今よりももっと広い世界で新たな出会いがあり、そしてそこから多くのことを学ぶ機会があります。
 生徒達には6年間の学校生活を通して、確固たる「基礎学力」を身につけ、将来、それぞれの舞台で「自分色に輝いて」活躍して欲しいと考えています。


※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。

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